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第117話

「…アキ兄」 「オレからみれば、ケンカしたり仲直りしたりできる、お前らの方が…自然な恋人同士だと思うけど?」 少し微笑むようにコウジへ伝える。 「…アキ兄だって、鈴鹿さんと結構長く付き合ってるよね?」 「…そうでもないって、まだ一年も経ってないし、意見対立したままだから、オレらの方が別れる可能性高いだろうな…」 「そんなの…」 「コウ、…人を好きになるのは、恐いことだよな…いつまで好きでいてくれるのか…いつまで一緒にいれるのか、未来(さき)のコト考えたらとりとめない…」 「アキ兄…」 「だから、オレは…別れること前提に付き合ってる、それはルードの時から変わらない…」 病を持つオレだから… 好きな相手を束縛し続けられない… 「…そんなの」 「おかしい?…コウとオレは価値観がだいぶ違うんだ…仕方ないよな」 そう柔らかく微笑む。 「僕だって…考えないわけじゃないよ、瞬は一人息子だし…僕だって、いつかは…って思うけど、でもやっぱり…好きだから、今はまだ…別れたくないって思う…。ケンカしても…離れられないのは…うん。だから、価値観とかじゃなくて…アキ兄も諦めないでほしいな…僕が言うのも…って思うけど、鈴鹿さんは瞬なんかより、かなり信じられる人だと思うから…」 コウジはコウジなりに考えてアキラに言葉を伝える。 「ふ…その言い方は彼氏に失礼だろ」 言い切るコウジに笑って返し…露天風呂からあがる。 「アキ兄!」 はぐらかす兄をほっておけなくてついていくコウジ。 その様子を少し離れた場所に居たみずきも気付くが… すぐついていける状況ではなかったので、様子を見送っている。 「オレ、もうあがるからさ…」 「アキ兄!待って、…アキ兄は、どうして鈴鹿さんを信じようとしないの?」 コウジはアキラに並んで歩きながら聞いてしまう。 「コウは、幸田クンのコト信じてるのか?」 アキラは少し考えて首を傾げ、聞いてみる。 「…え、それは、誰にでも愛想よくて女子に人気の瞬で、その事でよくケンカするけど…、それでも最終的にはちゃんと信じているから…付き合ってこれたんだと思う…」 ちゃんと答えるコウジ。 「…だろうな、ならお前らはまだまだ大丈夫だよ」 そう、アキラは優しく笑う… 「アキ兄は?」 「オレのことは気にしなくていいって」 また笑顔でかわす。 「気になるよ…アキ兄のコト、色々心配だし…」 「オレはオレ、お前はお前、心配は無用!オレなんかのこと気にしてるヒマないだろ、お前は…」 アキラは脱衣室まで来て…借り物のタオルで身体を拭きはじめる… コウジも同様に拭きながら話をしている。

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