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第118話
「…アキ兄って…雲みたいだよね…」
コウジはつい呟く…
「は?」
「いつもふわふわ漂ってるみたいに、ひとつ所に落ち着かないし…掴もうとしても全然掴めない…」
するするとすりぬけて…本心を隠してしまう。
「そんなことないって、ただ、オレの場合…将来のことを考える必要がないから…流されるだけ流されてやろうみたいな…、真剣みは確かにないだろうな…」
頷きながらそんなふうに言うアキラを見てコウジは…
「アキ兄!将来のこと考えなくていいなんて…どうして?確かに…アキ兄の病気は今は治らないけど…いつかは新薬開発されるかもしれないし、アメリカとかの日本で承認されていない薬とか探したら…」
その言い方に納得いかなくて言い返す。
「コウジ、…オレの病気は難治の先天性難病だからな…完治の可能性は、まずないから」
良くて現状維持…
アキラは旅館の浴衣を身につけながら、静かに言い返す。
「でも、病気の進行を抑える薬とかなら研究されてるでしょ?」
コウジも浴衣を着て問う。
「それでも…麻痺や、発作が起こる身体じゃ制限されること多いし…希望を見出だしても長くは続かない…」
アキラはふと微笑むのをやめて真剣な眼差しをコウジに向け話し出す。
「…もうそろそろ、そういう時期に来たかなって…思っているから、オレの言葉、ネガティブに聞こえるかもしれないけどな…適当に言っているわけじゃない…オレなりに先を考えて選んでることだから…心配は無用」
滅多に見せない表情で言われると…すぐ反論できない。
「アキ兄…」
「まぁ、気にならないように…いずれオレは外に出るつもりだから…」
アキラはまた微笑んで話を続ける。
「え?…外って?」
予想外な言葉に聞き返してしまう。
「…他の県、そこの施設へひとりで行く…」
「どうして!?」
「その方が1人になれて落ち着けるし、お前らにも迷惑かけないし…専門的な治療ができるから」
「…ダメだよ、そんなの…専門治療なら他にでなくても出来るところあるはずなのに…」
アキラのその考えには反対するコウジ。
「…本当なのか!?」
コウジの言葉に驚くように答えたのは、様子を見るため風呂からあがってきたみずき。
「あ、みずき…」
またややこしいことに…と、はぁ、と息をつくアキラ。
「鈴鹿さん…?」
「本当に都外へでなくても…アキラの治療は出来るのか?」
もう一度聞くみずき。
「それはもちろん…」
コウジは頷く…
「だったら…アキラ」
「…みずき、その話しはアト…早く服着ろよ、先行ってるから。…それとコウジ、余計なコト話すなよ…」
みずきの話を遮りながら、コウジに言い聞かせてその場を離れようとする。
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