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第127話

「……」 首を傾げているアキラの髪をそっと撫でて… 「俺は…胸を張って、アキラが俺の恋人だといえるように…努力するから」 まっすぐ伝える。 「…そういう努力は」 首を振るアキラの左手を握ってしまう。 指輪のない左手の指… 「……」 みずきは優しく少し淋しげに頷き微笑む… アキラがつけていない指輪… だから自分もつけられない… 何度もつけて欲しいと願うのは情けないから… アキラがつけてもいいと思える人間になるしかない。 「みずき…」 その純粋な気持ちは…痛むようにアキラのなかに響く… 「じゃ…ひと休憩だな…」 そして、アキラのそばに座っていつものあたたかさを贈るみずき。 そして…ふたりはゆっくり部屋で過ごしたあと、外へ散歩に出てみる。 「寒くないか?」 浴衣の上に一枚軽く羽織っているアキラだが心配して聞いてしまうみずき。 「お前こそ、」 やや後ろを歩くみずきを振り返って指摘するアキラ。 みずきはなにも羽織らず旅館の浴衣のままだから… 「いや…俺は寒くないけれど、アキラは寒がりだから…」 「…オレは、寒かったら寒いって言うって、」 アキラは軽く笑って答える。 「そうか…よかった、」 安心して頷くみずきに… 「つーか、浴衣に靴って合わないよなー」 みずきの姿を全体的に見てしみじみ言うアキラ。 さすがに履き物まではないのでフツーの靴をはいているから… 「そうだな…」 そのミスマッチにはみずきも笑ってしまう。 「そーいやー、幸田くんがコウジに女物の浴衣着せようとしたって言ってたけど、オレらってだいたいBOUS撮影で着てるもんな、」 アキラはふと思い出したように呟く。 「まぁな…」 「オレ、初女装9歳!終わってんな…」 自嘲的に笑うアキラを見てみずきも… 「いや…それを言うなら…俺の方が…」 そこまで言ってやめてしまう。 「え?なになに?言いかけてやめんな!」 案の定アキラにせかされる。 「……初めて女装した記憶は5才くらいだから…アキラより早い…」 言いたくないけれど、言わなくては許さない感じのアキラにおされて素直に答えるみずき。

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