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第131話

「なんでも話してくれたらいい、聞くのは得意だから…」 みずきは微笑んで頷く。 「だな…、みずきって妙に話しやすい雰囲気もってるんだよな…前々から思ってたケド…」 安心して話してしまう。 「そうなのか?」 首を傾げるみずき。 本人に自覚は無いけれど… 「うん、和み系…あと、からかうと反応が面白い」 そう、クスっと笑いながらみずきの鼻をつまんでみる。 「あ、アキラっ…」 驚くみずきだが… くすくすと楽しそうに笑うアキラの姿を見るとやはり許してしまう。 繋いでいる手をゆっくり引いて… アキラを抱き寄せるみずき… 「…みずき?」 アキラはすっぽり抱きすくめられて…様子をうかがうように呼んでみる。 「今、…すごく幸せだから…」 みずきはそっと耳元で囁く… 自然の中で…二人きり… 誰にも邪魔されない環境… 「…みずきは、欲が無いな…」 ぽつりと呟く… 「どうして?」 そんなことは無い筈だから…聞き返してしまう… 「抱きしめただけで、幸せ…なんて」 微笑むように伝える。 「欲はあるよ…人間だから、皆当たり前に…好きな人を抱きしめることだってそうだから…幸せなんだ、アキラだってあるだろ?」 みずきは逆に聞いてみる。 「欲…か、どうだろな…」 軽く首を傾げるように笑ってごまかすアキラ。 欲といっても色々あるから… 食欲や物欲…金銭欲、あまり当てはまらないような気がして… 唯一なのが性欲? ……最悪だよな。 みずきに寄り添いながら、そう心で嘲るアキラ。 「アキラは色々我慢してきているから、すぐに思い浮かばないかもな…」 ぽそっと、囁くみずき。 「…我慢なんか…してないって、自分勝手に生きてるし…傷つけたくないのに、みずき傷つけてるし…」 アキラは緩く首を振り…言い返す。 「…それは、お互い様だから…俺だって、アキラを困らせている…でも俺は、アキラといて幸せと思う気持ちの方が何倍も上だから、アキラを離したくない…」 諦めたくない… 強い気持ちがそこにあるから… 「…みずき、…アリガト」 ぽつりと零れる言葉…。 そこまで想ってくれる人がオレにもいることが、少し誇らしい… けれど、応えない自分は本当に最悪で… 想われる資格はない筈だけど…

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