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《旅行2日目》

ここは、とある田舎のけっこういい温泉旅館。 幸田瞬助の発案で叶った6人での旅行。 様々な思いを胸に夜は明ける… 小鳥のさえずりで目を覚ましたのは、鈴鹿みずき… 歳は21才、一人のひとを純粋に愛する優しい青年。 その愛するひとは、自分の隣で、まだすやすやと眠っている… 自分より2歳年下の楠木アキラ。 淡い茶色の髪色で…瞳は深い緑色… 中学三年の終わり頃くらいから伸ばしている髪… 今は肩あたりの長さで落ち着いている。 安心して眠るその横顔をみていると…幸せな気持ちに浸れる。 しかし…この一刻一刻流れる時の中で、アキラの身体は徐々に持病に蝕まれていっているのだ… 筋神経系の伝達異常を引き起こす先天的な病… 特殊な病… 今現在、治る見込みはないという。 四肢の麻痺や緊張…時には発作がおこりアキラを苦しめている。 症状の悪化とともにキツい薬が処方され… 副作用にも弱音を吐かず耐えている… そんなアキラをしっかり傍で支えていきたい… そう…真剣に想っているけれど、アキラの気持ちは…未だ自分の方へはむいていない。 それはすごく悲しいことだけれど、アキラの気持ちやプライドを傷つけないよう…助けていけるように、そしてアキラに認めてもらえるよう自分が努力していかなければ…。 みずきは常に心に思いながら…日々を過ごしている。 目が覚めてしまったみずき… 時計で時刻を確認する。 (…七時半か、そういえば朝食は八時だったような…) 昨日、幸田瞬助が、八時に一階の座敷ホールで朝食と、みんなに伝えていた… (そろそろ起きなくてはな…) そう思い、アキラより先に布団から出ようとするみずき… 「ん…朝…?」 それに反応してアキラも寝起き声をだす… 「あぁ、おはよう、アキラ…」 そっと頬に触れてみるみずき。 触れてみてアキラの体温の状態を把握することもかねて、やはり少し熱があるようだ… 「…おはよ、何時?」 目をこすりながらぽそっと聞くアキラ。

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