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第195話
その頃、アキラとみずきは庭にある犬用の小屋までたどり着いて…
「メアリー、リッツ…」
アキラは二匹の犬の名前を呼んで、屈むようにして犬たちに近づく。
犬たちは大喜びでしっぽを振りアキラに飛び付く…
「よしよし、元気にしてたか?」
優しく撫でながら、さっきの不愉快さを紛らわすように犬達と触れ合うアキラ。
みずきはしばらく見守っていたが、黒色の犬のリッツがみずきにも寄ってきたので、屈んで撫でてやる。
さっきのこと、アキラの父親について気になるけれど、アキラの様子をみると聞けない。
触れないようにするとうまく言葉が出なくなるみずき。
アキラの様子をみる。
「連れて帰ろうかな…」
不意に犬たちを撫でながらアキラは呟く…
「え?」
「オレ、こいつらにはすごく助けられてきたからさ、できるかぎり一緒に居たいんだ…うちペットOKだから…」
損得なしにまっすぐオレを必要としてくれる犬たち…
どれだけ心が和んだか…こいつらがいたから独りきりの家でも生きてこられたから…
「あぁ、そうだな…犬達も喜ぶだろう」
みずきも頷いて微笑む。
アキラが喜ぶことならなんでも叶えてやりたいから…
「うん…でも、散歩とか行けないときあるかも…」
自分の体調管理はしっかりしているけれど、それでも具合が悪くなることはあるから…少し心配するアキラ。
「その時は俺が行くから大丈夫…でも、できるだけ一緒に行こう…」
安心させながらアキラの肩に触れるみずき。
「ありがと…」
優しいみずきを見つめてお礼を言う。
そんなアキラの姿に、やはりドキドキしてしまうみずき。
そっと肩を寄せようとすると、邪魔をするように犬たちがアキラとみずきの間に割ってはいってくる。
「ふっ…メアリーとリッツもありがとうな、可愛すぎ…」
ヤキモチを妬いているような犬たちの行動に軽く笑って、優しく抱き寄せ、撫でてやるアキラ。
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