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第4話
「ジェレミー、勘弁しておくれよ。この指輪はミシェルとの愛の証なのだ。いくら君の申し出であっても、外すことはできない」
「外すのではない。私は捨てろと言っているのだ。ミシェルのことを覚えている限り、君は前に進めない。その指輪を捨てることで、君は新しい君の人生を歩めるのだ。――過去に囚われたままでは生きていけない」
ジェレミーはことあるごとに執拗に結婚指輪を捨てるように進言する。だがトオルにとっては命よりも大切な指輪だ。いくら担当医であるジェレミーの言葉であっても、受け入れることはできなかった。
「ジェレミー……わかってくれ」
いつものようにトオルが頭を下げると、ジェレミーはやれやれと肩をすくめる。先に折れるのは決まってジェレミーのほうだ。
「わかったよ、トオル。見かけによらず、君は頑固だね。指輪の話はまた今度にしよう。さあ、私の家へ向かおう。君の身体もすっかり冷えてしまっているからね」
長身のジェレミーに肩を抱かれながら、トオルは墓園をあとにした。
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