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第8話

 プラチナブロンドの髪をオールバックにし、にこやかな笑みを浮かべている。目尻や口元に半世紀を生きてきた皺が刻まれているものの、ジェレミーは同世代の誰よりも若々しく、気品に満ち溢れていた。 「トオル! よかった、思ったよりも元気そうで何よりだ。ずっと心配していたのだよ」  ガラス越しにトオルと目が合うと、ジェレミーはほっとしたように肩の力を抜き、胸をなでおろす。  本気で心配していたようだ。  トオルは玄関の鍵を開け、ジェレミーを迎え入れる。リビングへ招き、ジェレミーのものより数段ランクの下がるソファーに彼を座らせてから、ダージリンを淹れ、彼の元へ持っていく。  ジェレミーは嫌な顔ひとつせずに、一口啜ると、トオルに向かって微笑みかける。  そんなジェレミーの様子に、トオルは彼に対して行った子供らしい過ちを詫びようと口を開いた。 「ジェレミー、先日は無礼な態度を取ってしまい、すまなかった。私は君の冗談を真に受けてしまい、恐ろしくなって逃げ出した。本当にすまない」 「トオル、なぜ君が謝るのだい? 無礼を働いたのは私のほうではないか」  対面のジェレミーは朗らかな調子で話すが、その目元が笑っていないことに、トオルは気づいてしまう。  また、ジェレミーを怒らせてしまったのであろうか。  不安がるトオルをよそに、ジェレミーは続ける。 「君は私の告白を冗談だと取ったようだが、それは大きな間違いだ。私は本当に君を愛している。今日は改めて、君にプロポーズをしに来たのだ。少し時間をくれ。君へのプレゼントを車に置いてきてしまったのだ」

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