11 / 23

第11話

 真正面に、ジェレミーの金色の瞳がある。  それはいつ見ても幻想的であると同時に、自分の真意を見透かされそうで恐ろしくもある。  真っ直ぐなジェレミーの瞳が怖くて、トオルはそっと目をそらした。 「ジェレミー……君なら私よりもふさわしい相手が現れるさ」 「やはり君は残酷だ。この私がなぜ伴侶を娶(めと)らず、独り身のままでいたと思っている? すべては君がそうさせたのだ。君の存在が私を狂わせ、どうしようもない男にさせた。トオル、君があまりにも美しいから、私は君と一生を共にしたくて……ああ、すまない。そんなに怯えないでくれたまえ」 「君は……その、ゲイ……なのか?」 「私が愛したのはトオルだけだ。いや、いまでも君を愛している」 「ジ、ジェレミー……っ」  胸に抱えていた花束がぐしゃりと潰れる。トオルはジェレミーに抱きすくめられた。 「トオル……」  ジェレミーのムスクだろうか。  甘くて苦い芳醇な香りがトオルの鼻腔をくすぐる。それにジェレミーのほのかな体臭が合わさって、トオルの身体を落ち着かなくさせる。  首筋から臀部にかけて、じんわりとした衝撃が走った。 「ジェレミー……離してくれ……私は、私は君の想いには応えられない……」 「ミシェルに操立てでもしているのかな?」 「ち、違う!」 「君の身体は実に正直だね」  ふうっと、ジェレミーの吐息がトオルの耳朶をくすぐる。

ともだちにシェアしよう!