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第12話
「身体はこんなにも正直なのに……君は頑なに私を拒もうとする。もしかして焦らしているのかい? そうだとしたら、君は存外、小悪魔なのだね」
「ジェレミー……頼む、手を……手を、離してくれ……っ」
背中に回ったジェレミーの手つきは徐々に淫猥になっていく。
トオルの背筋をつつーっと流れ、神経の巣窟である首筋を捕える。もう片方の手はトオルの臀部に辿り着き、服の上からアナルに触れた。
「っ、ぁあ……っ」
半世紀生きてきても、いままで感じたことのない疼きがトオルを襲う。
「ああ、ジェレミー離してくれ……っ、あ、このままではおかしくなってしまう!」
「狂ってしまえばいいさ」
ジェレミーはトオルの額にキスを落とし、蠱惑的に笑う。
「何もかも忘れて、狂ってしまえばいい。そうすれば、君はもう悲しい思いをしなくてもいい。私と共に暮らそう。それが君にとって、何よりも大切なことなのだ」
「わ、私は……私は何を信じればいいのだ……? 教えてくれ、ジェレミー」
「トオル、私の伴侶になってくれ。私と共に生き、共に死のう。君が信じられるのは、この私だけなのだから」
衣服の上からペニスを握られ、じゅくじゅくと揉まれる。
トオルの理性はジェレミーの手管によって、あっという間に彼方へと飛んでいく。枯れたはずだと思っていた肉欲に支配され、トオルはジェレミーの言いなりになるしかない。
ジェレミーの右手がトオルの左手を包む。ミシェルとの愛の証が、そこには光っている。
「これはもう必要ないね。君にふさわしいものを、私が贈ってあげる」
トオルはジェレミーの真意がわからずに、何度もうなずく。張りつめた下部を、一刻も早く解放してほしかった。
――死ぬまであなたを愛す。
無惨に散らばった黒薔薇の花弁が、その後のふたりを見守っていた。
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