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第14話

「夢のようだ。こうして君に触れられるなんて。カレッジで君と出逢った日から、私はこうして、君と触れ合いたかったのだ」  キスを終えたジェレミーはうっそりと笑い、トオルの身体を抱きしめる。トオルもまた、ジェレミーを抱き返した。 「指輪の交換をしよう」  ふたりきりの挙式は花婿自らが進行役になって進められていく。トオルはジェレミーに言われるがままに、彼の指示に従い、彼の花嫁役を務めあげる。  ジェレミーは胸元からプラチナリングを取り出し、トオルの左薬指にはめる。指輪は少し大きかった。 「今度は君の番だ」  トオルはあらかじめジェレミーから手渡されていたリングを、彼の左薬指にはめる。サイズはぴったりだった。 「これで私たちは永遠に夫婦だ。愛しているよ、トオル」 「愛しているよ、ジェレミー」 「ありがとう、トオル。さっそくだが、私は君を抱きたい」 「……この場で、私を抱く? 君はそう言ったのか?」  トオルは目を見開いてジェレミーに問いかける。 「年齢を考えろ。君も私もいい歳だ。それにここは神聖な場所だろう? 神の前でまぐわうだなんて……君は気でも違ってしまったのか?」 「神は我々を祝福してくれるよ。恥ずかしがることはないさ。生まれたままの君の姿を、私たちが愛を育む姿を、堂々と見てもらおうじゃあないか」 「しかし、私は――」 「トオル、この場に及んでその態度はないんじゃないか。私と君は夫婦になる。そう誓ったばかりではないか。それを破るのかね。――ああ、そうか。君の中に流れている日本人の血がそうさせるのかい? 貞淑概念は立派なことだが、あまり私を怒らせないでおくれよ」 「違うんだジェレミー! 私は……その、この年まで、ミシェル以外の人間と交わったことがない。だから、わかるだろう? 私は君を拒んでいるのではない。むしろたじろいでいるのだ」  トオルは正直に答える。対面に立つジェレミーの様子をうかがうと、彼は無表情だった。

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