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第15話
「わかってくれ、ジェレミー」
「……それを聞いて安心したよ」
カツン、と教会内に高く響く足音。軽やかな音色を響かせながら、ジェレミーはトオルとの距離を一歩、また一歩とつめる。
「私と繋がるための場所は、まだヴァージンだったのだね。嬉しいよトオル。さあ、私のもとへおいで」
ジェレミーが大きく腕を広げる。この胸に飛びこんでくるようにと。
だがトオルはその場を動くことができない。
どうしてだろう。
警鐘の鐘が鳴る。
次にジェレミーに触れたら、もう戻れなくなる。
「トオル?」
ジェレミーの良く通るテノールは、讃美歌を歌わせたら、さぞ素晴らしいものになるだろう。
この声を聞いてはならない。
戻れなくなる。
「君が信じられる相手は世界でこの私だけだ。私たちは共に生き、共に死ぬ。そういう運命なのだ。私は君を愛している。君も私を愛している。これ以上ない幸せだ。なあ、そうだろうトオル?」
「私は……私は……」
「おいで」
トオルは前進する。
不慣れなヒールでもたつく。
まるで千鳥足のようだ。
だがふらつくトオルをジェレミーは助けてくれない。
ただただ腕を広げ、トオルから来るのを待っている。
たかだか五フィートもない距離なのに、ひどくもどかしい。
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