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第4話 闇の日の前夜、明けて昼

「ジュール、ダメっ、ああ、ヤだ、それは、イヤ……」  思わず昔の愛称が出る程、リマーユは追い詰められていた。ジュリアードの唇が、リマーユの秘所に触れていたのだ。ここ一ヶ月ですっかり開発されてしまったリマーユの秘所は、リマーユの意思に反して、くぱくぱとジュリアードの舌を求めていた。ふ、と息を掛けられると、尚のこと物欲しそうに開いたり閉じたりした。 「お前のココは、違う事を言っているがな」  ジュリアードは、普段が嘘のように、身体を合わせる時は饒舌になる。それが、また、リマーユを追い詰めるのだ。 「ダメ、お願い、ジュール、やめて……」  弱々しくリマーユが口にしても、無情にもジュリアードの舌はぴちゃり、とリマーユの秘所を舐めた。ぴちゃりぴちゃり、生温かいジュリアードの舌が這って行く。ぞくぞく、と震える身体を持て余して、リマーユはただひたすら震えるしか無かった。 「あ、お願いっ、奥は、ダメ!!」  ずぬ、とジュリアードの舌がリマーユの秘蕾の中に押し入って来る感覚があって、リマーユは逃げるように身体をベッドの上へ上へと動かす。しかし、ジュリアードはそれが分かっていたのか、リマーユの腰をがっちりと掴んで留めた。ずぬずぬ、と舌で愛撫され、リマーユは余りの羞恥に頬から雫を垂らした。頭では羞恥と思っているのに、身体は違っていて、リマーユの下腹部は力を漲らせていた。慣らされた身体は、ただただ、素直に反応を示すのだった。 「お前の身体は、口よりも素直だな」  くく、と笑いながらジュリアードは言う。リマーユは、羞恥と、それから、隠しようも無い期待から頬を赤く染め、ジュリアードを見上げる。ごくり、とジュリアードの大きな喉仏が上下した。 「何が、欲しい? 言ってみろ」  ジュリアードは常よりも低い声で、囁くように言った。その息が、ふ、とリマーユの開いたナカに掛かる。びりびり、と身体中で快楽を享受してリマーユは震えた。 「リマーユ、リマーユ、お前のその口で、俺を求めてみろ」  ごく浅い部分の襞を、戯れに指で擦られる。既に、リマーユのそこは、消化器官では無かった。完全に性器と成り果てていた。ぐるり、指先で弄られると、堪らない快感が背筋を伝って行く。 「ああっ、あん、ジュール、ジュール!!」  必死に指を噛んでいた筈の唇は、噛み締める事を放棄し甘い声を出す。 「リマーユ、何が、欲しい?」 「あ、お、おちんちん、おちんちんが、欲しいっ!!」 「何処に、だ?」  追随の手を緩めずジュリアードが問い掛けると、リマーユは、あっけなく陥落した。 「僕の、僕のおまんこに、ジュールの、おちんちん、ください!!」 「よく、言えたな。偉いぞ、リマーユ」  ジュリアードは惜しみなく褒めたが、リマーユは、ただただ首を振った。今のリマーユに必要な物は、ただひたすらに求めているものは、欲しいのは賞賛では無かった。 「欲しい、欲しいよお!!」 「焦るな……お前の欲しい物は、ちゃんと、やる」 「ジュール、ジュール……」  すすり泣いて、リマーユはジュリアードを求めていた。殊更ゆっくりと夜着を脱ぎ去ったジュリアードは、ふう、と息を吐いた。ひく、とリマーユの唇が震える。 「いや、ヤ、それは、ヤだっ、ジュール、それは、嫌だ!!」  途端に、逃げ腰になるリマーユの腰をがっちりと押さえると、ジュリアードは嫌がるリマーユのナカへと、簡単に押し入った。散々弄ばれ、開かれたリマーユの秘所は、難無くジュリアードの剛直を受け入れる。 「あああっ!!」  入れられ、内壁を軽く擦られただけで極めたリマーユの下腹部から、勢いよく白濁が飛び散ってシーツを汚した。シーツは、いつも、二人の交わりでは、無残にも汚される事は、当然の事だった。 「ヤだっ、嫌だっ!! ジュール、止めてぇ!!」  びくびくん、と震えるリマーユの幼い性器は、精液を吐き出したのに、未だ力を保っていた。腹部は、ほんのりと、熱を帯びている。 「気持ち良い、だろう? 魔力循環を覚えれば、お前も、もう少し、保つようになるし、もう少しまともな魔法が使えるようになる……」  ジュリアードが、剛直を通じて、肚の中へと、魔力を押し込めているのだった。リマーユは、魔力循環が、苦手だ。いや、正確には、余りの快感に頭がおかしくなる、と言う方が正しいか。ひたすらに送られて来る魔力は、ただただ過ぎる程の快感でしかなく。 「やあ、助け、助けて!! ジュールっ、苦しいっ!!」 「感じてみろ……ここから、全身に回せ……」  ただでさえ、ジュリアードの半身で内壁や前立腺などを擦られ、快感を享受しているのに、リマーユには、ジュリアードの言うように魔力を循環させられる程、魔力に集中出来る筈も無かった。しかし、ジュリアードは無情にも、リマーユの腹部に触れると、指先からも魔力を流し、動きを促す。 「ああああっっ!!」  再び、快感が全身を駆け巡り、リマーユは後ろでも前でも極めて、白濁をまき散らし大きく身体を震わせるのだった。 「相変わらず、敏感だな……本当に、お前のナカは最高だ……」  聞こえているのかいないのか、定かでは無い状態で、リマーユはただただ身体を震わせていた。ジュリアードは、一際高くリマーユの腰を引き寄せると、強く腰を打ち付け始める。あ、あ、とリマーユの口からは意味の無い声が漏れていた。 「いっそ、孕んでしまえ……」  ジュリアードが呟いた低い声に、リマーユはただ、嬌声を上げて応えるしか無かった。 心の片隅で、そう出来たら、どれ程良いだろうかと思いながら。 「喉、渇いた……」  がらがらの、酷い声だった。今日が闇の日(こちらで言う休みの日)の為か、ジュリアードは、信じられない程、情熱的に、そして、激しく、何度も何度も明け方近くまでリマーユを求めた。今は、陽が高い。意識を失うように眠ってから、昼過ぎに起きるのは、闇の日には、よくある事だった。ぐったりと力の入らない指先を動かして、サイドテーブルに手を伸ばす。そこには、水差しとグラスが置かれていた。何とか身体を起こしたが、余りの重怠さに枕に寄り掛かっていないと、崩れ落ちそうだった。手を伸ばして水をグラスへ注ぐ。魔道具で作られた水差しの中の水は、ひんやりと冷たく、リマーユの喉を優しく伝って行った。 「ジュリアード?」  呼び掛けても居ない事は分かっていたが、一応、声を掛けてみる。案の定、何の応えも得られなかった。 「何処、行ったの、かな?」  重怠い身体を何とか気力で支えながら、もう一杯、水を注ぐ。すっかり中身を飲み干すと、疲労感からまた眠気が襲って来た。だが、湯浴みもしたい。一応、ジュリアードが濡れタオルで拭い、生活魔法の浄化を掛けてくれた感じはあったが、それでも、残る違和感と言う物は有る。けれど、我慢出来ない程の眠気も確かに有った。結局、身体の重怠さも手伝って、リマーユは夢の中に意識を飛ばす事を選んだのだった。 「旦那様は、酷いお方です!!」  誰かの声がする。甲高い声だ。こんな声を出すのは、この屋敷に果たして居ただろうか。 「お前には……」  もう一人の声は、ジュリアードだった。だが、遠くで話しているのだろう、全容は上手く聞き取れない。二つ向こうの執務室からの声だろうか。うつらうつらしながら、リマーユは目蓋を押し上げるべきか、それとも、まどろみに身を委ねるべきか、決めかねていた。 「奥様は奴隷ですか!!」  再び響いた言葉に、ようやくリマーユは目蓋を押し上げた。この声は、どうやらメイド頭のカロリーヌのようだった。奴隷、と言ったか。奴隷制度が撤廃され、奴隷を所持する事に罰が与えられるようになってから、もう、600年以上経っている。それなのに、奴隷、とは、また、随分穏やかではない言葉だった。 「カロリーヌ、口を……」  ジュリアードの声は、あくまでも穏やかだった。いつもの、あの、全く表情を感じない顔で、対応しているのだろう。リマーユは、重怠い身体に鞭を打って、身体を起こす。シーツが、はらり、と落ち、自分の何も身にまとっていない半身が陽の光に晒されるのが分かった。服、と思い回りを見回すが、昨夜ジュリアードに脱がされた夜着は何処にも無かった。 「こんな事なら、ミシェーリ様をお迎えするべきでした!!」  もう一度響いたカロリーヌの声に、服を求めて一歩を踏み出し掛けたリマーユは、完全に固まった。  今、何と言われただろう。  カロリーヌの言葉を反芻する。そして、リマーユは、はは、と小さく笑った。頬には、つつ、と涙が零れ落ちていた。シーツを掴んでベッドの中に潜り込む。カロリーヌの発言に対する、ジュリアードの応えを、絶対に、聞きたくなかった。きっと、ジュリアードは本音を言わないだろうが、それでも、その中に込められたミシェーリへの想いを感じたくなど、無かった。寝具で作った暗闇の中で、必死に耳を押さえながら、リマーユは、ただただ、涙を流していた。

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