22 / 28
bonus track.3
「あっ、やだっ……これ、ぬるぬるするっ」
「コラ、あんまり動くなって、転ぶぞ」
メンバーからネタで貰った入浴剤は、溶かしたゼリーののようにぬるぬると、自由の肌いやらしくまとわり着きながら浴槽で波打っていた。
最初は大人しく葉山に凭れかかって、甘いキスを何度か交わすだけだった。なのに、葉山が面白がって自由の敏感な場所を弄り出すので、あっという間に自由は自身を固くさせた。胸の尖りを指で摘まれるたび、丸く小さな尻を無自覚に葉山自身に当てて煽る羽目になる。
「誠ッ……だめ、まだ挿れ……ないで……っ」
「やだ、無理」
胸に這ったままの葉山の手を捕まえて、自由は上気した頬で懇願する。
「ねっ……お願い……」
今、その言葉はズルイだろうと、葉山は脱力して自由の細い肩にガクリと頭を乗せる。
イヤも、ダメも、ただ口をついて出るだけの羞恥でしかないのを葉山は知り尽くしているが、自由の「お願い」だけは乱暴に扱うことが出来ない。
それを口にするときは本当に自由は嫌なのだ。そして、必ずと言っていいほど、ひどく辛そうな目をする。
「なんか、俺がいじめてるみたい……そんな顔しないでよ」
「……違う……、俺、最近ダメなの」
自由が駄々っ子みたいにブンブンと、かぶりを振る。
「ダメって、なにが?」
「……ぃから……」
「え、なに?」
あまりにも蚊の鳴くような声で自由が話すので、葉山は自由の口元に耳を限界まで近付けた。
「最近早いの! 誠一郎に挿れられたらすぐイッちゃうのっ、ハワイに行った時、誠一郎が毎日ヤラシイから……俺、もう無理……こんな身体恥ずかしい……」
嘆きの最後はもう涙声に近かった。
葉山は頭の中で活火山が大噴火するような、爆発に近い衝撃を感じた。
「お、前……本当に〜〜っ、監禁してやろうかっ!」
「ヒッ、マジで怖いよっ、誠一郎!」
興奮した男にガッシリと両肩を掴まれて、自由は荒い鼻息に慄き、本気で顔が引きつっている。
「怖いのはお前だよ! バカ! 大好きだ!!」
ギュッと正面から抱き締められて、自由はあまりの恥ずかしさに肩を竦めた。
「……も、もっかい……言って……」
「大好きだよ、愛してる」
「あっ、愛してるって言った!」
「言うよ。愛してるもん」
「ま、また言った……!」
──嗚呼。こんな姿、職場の部下には絶対に見せられない。墓場まで持っていかないとダメだと、葉山は尋常でない自分の感情の大きさに幸せな溜め息が出た。
家族に否定され、責められ、妹に先立たれ、自分のことを何度も何度も呪った。
他人の幸せな住処を作ることは出来るのに、自分は一向に満たされなかった。心はいつも穴だらけで、毎日が酷く寒く感じた。
誰のために、何のために自分が生きているのか、いくら考えても答えには辿りつかなかった──。
ともだちにシェアしよう!