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12 朧月ーおぼろづきー
寮の屋上に出て、煙草を吸う。
煙のせいで綺麗な朧月がさらに霞む。
実家を出て、電車で二時間弱。
高校は地元から2つ街を越したとこにある。
両親は地元を出ることを反対しなかった。
理由は俺の中学時代。
小学校卒業後、そのまま地元の中学に進学した。
それが間違いだった。
違う小学校の奴らも混じって成り立つその場に
ガキ特有の「私こんな秘密知ってます」という優越感。
中学生にもなれば、そういうことにも敏感になる。
あの事件は格好の餌食となって、校内に広まった。
耳に纏わりつく囁き声。
突き刺さる視線。
時には心ない野次も。
一番最悪だったのは、
「1回やったら2度目も何もないだろう」
というぶっ壊れた思考回路。
華奢な上、顔が男っぽくないっていうのもあったのかもしれない。
女に手を出すより遥かに簡単だと思ったのだろうか。
喧嘩に明け暮れたのも強くなって2度とあんな思いをしないため。
悔しい思い、怒りをすべて拳に込めて相手の顔面にめり込ませた。
結局中学校はほとんど行かなかった。
そんな俺に母親は泣いた。
父親も顔を歪ませた。
母親を泣かせたことに酷く後悔した。
でももう引き返せないくらい何もかもぶっ壊れていた。
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