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18 靉靆ーあいたいー

あの日から早一週間。 鳥羽くんとはあれから目が合わない。 というか、あからさまに避けられている。 納得いかない。 嫌なら嫌って言ってほしい。 察しろと言われても困る。 だってあの顔は嫌というよりも困惑に近い。 今日はあいにくの曇天。 朝からにわか雨が繰り返され、鳥羽くんも珍しく教室にいる。 屋上に出たら濡れるからだろう。 昼休、いつもなら俺もバスケコートに繰り出しているところなのに。 「俺ってしつこいタイプだったんだな…」 音楽を聞きながら外を見つめている鳥羽くんを眺める。 目の前でお互いの推しのアイドルについて雑誌を見ながら熱く語っていた烏丸と渡貫が顔をあげる。 「何、また見てんの?」 烏丸が呆れ顔でページをめくった。 渡貫もパックジュースのカフェオレを飲みながら苦笑いをする。 「話してみたいっつっても向こうにその気がないなら時間の無駄じゃね?」 「一匹狼ってやつだもんな」 「まー喋らないしお美しくていらっしゃるから、狼っていうより人魚姫だな」 「あーーたしかに、それな」 「そんなこと言ったって。何も言ってくれないから分かんねーよ」 ため息をついて机に突っ伏す。 すると渡貫が見ていた雑誌を俺の頭に乗せる。 「元気だせよ、萌志。ほら、この子俺の推しのみやびちゃん。この子見て癒やされな。」 「何言ってんだよ、渡貫!みやびちゃんよりかりんちゃんだろーが!!!」 「馬鹿野郎。何を抜かすか貴様。」 「ふん、お主とはとことん意見が合わんな。」 元気だなーこいつら。 いい意味でも悪い意味でも素直なこの2人。 なんでも思ったことは口にするから、意志の伝達が簡単だ。 そんでもってすごく楽。 「あーーーー……………納得いかない……」 心が全然スッキリしない。 諦めがつかない。 まだ可能性が残ってたりしないかな。 ってしつこいなぁ、俺。 やだな。 嫌われているって自覚さえできれば諦めれるのに。 腕の隙間から彼を見る。 つまんなそうで、どこか寂しそうな顔。 ちょっとでもいいからこっち見てくれないかな。 ねぇ、鳥羽くん。 俺と話そうよ。 また目を見てよ。 音楽もいいけど、俺の声も聞いて。 お願いだから 俺の声を聞いてよ。

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