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昼飯……………とは到底言えないパックジュースを投げてはキャッチしてを繰り返し、階段を上がる。 屋上の扉の手前。 【立入禁止】の文字を跨いで、鈍色の取っ手を握り、勢い良く開け放つ。 「よー!」 栗色のくせ毛を風に揺らしながら、片手をあげる御波。 「あれ、昼飯は?」 問いかけに持っているパックジュースを振れば、御波は声をあげる。 「はぁ?!育ち盛りが何言ってんの?!」 仕方ないじゃん。 人が多い朝のコンビニも生徒があふれる購買もいきたくない。 入学してから昼飯は抜いている。 喫煙のおかげで食退しているからなんてことはない。 夜中、人が少ないコンビニで夜ご飯と翌朝のご飯を買う。 そんな生活を続けている。 「も~ちょっと待ってて」 「?」 呆れたようにため息をついた御波が足早に校舎に入っていく。 数分後。 御波は両手いっぱいにパンやらおにぎりやらを抱えて戻ってきた。 それをあぐらをかいて座った俺の前に並べていく。 「焼きそばパン、メロンパン、サンドイッチにあんパン。梅おにぎり、鮭、昆布、あとこれはー……牛たんおにぎり!」 いやどんだけ買ってんだよ。 呆気にとられた俺の正面に御波は自分の弁当箱を持って戻ってくる。 御波が購買に行ってる間に飲み終わったパックジュースを潰す。 「好みわかんないから色々買ってきたけど…ちゃんと食べなきゃ。よくそんなんで生きてこれたよな!」 財布を取り出す俺を片手で制しながら 「俺も部活前に食うから、お金はいい。」 まじか。 さすが高身長。食ってる量が違う。 ガツガツと弁当をかきこむ御波を鮭おにぎりを片手に眺める。 そして俺が鮭おにぎりを食べ終わる前にごちそうさま!と手を合わせた。 それとは対象的に俺はちんたらおにぎりを口に運ぶ。 弁当を片付け、次に焼きそばパンの袋を開けながら、御波が思い出したように口を開いた。 「で、どうするの」 もそもそと咀嚼を繰り返して思わず視線をそらす。 そんな俺を見て遠慮がちに御波は 「……………トラウマの克服、てかいてあったけど………」 腹を括るしかないか。 いやでも。 まだ何もかも話せる間柄ではないし、そう簡単に話せる内容でもない。 嘘ではないけど本当のことでもない、そんな内容をメッセで送る。 『人に触られるのが苦手。少しでも触られたら過剰に反応してしまう。でもそういうのに慣れていったら克服に近づけると、思う。』 苦手ってレベルじゃねーけどな、ほんとは。 文を見た御波は「ああ、だからあの時…」とつぶやいて腰をさすった。 階段で突き飛ばされたことを思い出しているのだろう。 申し訳ないけどこればっかりは体が反射で動いてしまう。 うんうん唸っていた御波がおもむろに手を差し出した。 「ん!」 え、何?やっぱ金返せって? ポケットから財布を取り出した俺を わー!!!違う違う!!と御波が慌てて止める。 「ちょっと俺のこと触ってみて。俺からは触らない。無理だと思ったらすぐ離れていいから!……なんなら消毒してもいい」 なんで自分で言ってショックを受けているのか。 消毒とかそんなことはしないけど、さすがに。 ん!とまた差し出された御波の手のひらをまじまじと見る。 今朝、弓を引いてたあの横顔を思い出す。 大丈夫。 そう言い聞かせて俺は意を決して手を伸ばした。

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