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スマホに綴られた鳥羽の言葉にさっきまで立ち込めていたモヤモヤが一瞬で消え去った。 『嫉妬』 『俺には御波だけ』 『また1人になるのが怖くなった』 真っ赤な顔して俯いている目の前の鳥羽がなんかこう………かわいい。 え、すっげーかわいい。 何この生き物。 1人でテンパって逃げ出して結局捕まっているこのアホかわいい生き物は何? ふわふわでいい匂いの女の子とは全然違くて、骨格も何もかもが俺と同じはずなのにかわいい。 かわいいと思ってしまうのは、俺の目と頭がおかしくなったのか それとも鳥羽がいけないのか。 なんでもいいけど、とにかくかわいい。 ただもう頭の中は「かわいい」でいっぱいになって ぎゅっとして安心させたくて 思わず口から『抱きしめたい』って言葉が飛び出していた。 たじろぐ鳥羽を壁まで追い詰める。 それだけでも何だか背徳感でゾクゾクした。 でもこれで気持ち悪がられるのは絶対避けたいから 嫌だったら突き飛ばしてほしい と告げる。 でも鳥羽が俺を突き飛ばすことはなくて。 すっぽり腕に収まってしまった鳥羽。 ホッとして息をつく。 緊張でガチガチに固まってるし、何より自分の胸に響く彼の心音がやばい。 思わず笑ってしまったけど、俺も同じ。 首筋に鳥羽の吐息がかかってくすぐったい。 でも身を小さく捩る彼を逃したくなくて腕に力を入れてしまう。 相変わらず細い。 きつく抱きしめ過ぎたらふわりと溶けてしまいそうな、そんな感じ。 もうちょっとだけ。 気づかれない程度にその黒髪を梳く。 俺が鳥羽を置いていくことなんてない。 俺からは離れてやんない。 1人にしないよ。 だって先に近づいたのは俺だから。 鳥羽が『もうお前いらない』って言うまで離れない。 できれば、ずっと仲良くしてほしいけどね。 そんな意味も込めて言葉を伝えると また鳥羽の目元がじわりと朱に染まる。 また泣きそうなのかな でも泣かないもんね。 今日はちょっと俺が急いてしまって、自ら触れてしまったけど。 本当は人に触られるの苦手なくせに。 ちゃんと抱きしめさせてくれた。 きっとまだまだ俺に言えないこと、沢山あるんだろう。 今まで一人で抱えてきた辛いことは 俺が半分持って これからある楽しいことは 俺の分もあげてしまいたい。 さぁ、ところで俺よ。 …………俺の中で鳥羽は『友達』で本当に合ってんの? うーん、ノーコメント。

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