69 / 138

69

「……俺、片想い初めて3年経つんだけど。 俺の場合は、一目惚れでさ。 すんごい不毛なんだ。最初は、今の萌志みたいに悩んだ。 相手は普通に女の子が好きで、叶うはずがないって分かってるからさ。 でも、好きって思っちゃったら止まんなくて。 あいつに彼女ができたらどうしようってハラハラして。 あいつに何でこんなに振り回されなきゃいけねーんだってイラつく。 だから、傍に入れるだけで充分幸せじゃんって、高望みなんかせずに弁えようって。 思って、抑えて抑えて抑えて……。」 烏丸が俺を見る。 マスクを外したその顔は、どこかまだあどけなくて。 いつものクールさは消えていた。 そして悲しそうな笑みを浮かべる。 「萌志、俺みたいになんなよな。俺は現在進行形で苦しいから。 そんな思いをこれからのお前にさせたくないんだよ。 抑えすぎて、バカになるんだ。もう一生あいつに囚われたまま、生きるんじゃないかって。」 「烏丸……。」 「なぁ、頼むからさ。お前は、俺と違ってゲイじゃないし。 可能性なんてそこらへんにゴロゴロ転がってんじゃん。 苦しいから、怖いからわかるんだ。 嬉しいって好きだって思った瞬間から切なくなるの、もう知ってんだろ? もう1年だけ好きでいようって、自分で意味なく期限伸ばして。 それを我慢し続けて、麻痺していくお前を俺に見てろっていうのかよ…。」 烏丸は小さく悲痛な声を漏らす。 いつもあっけらかんとして、のらりくらりと面倒ごとを避けているように見えたこいつ。 聞き流せって言われたけど、こんな烏丸見せられてら黙っていられない。 「……烏丸、おまえ、」 「ごめん、感情的になった。……大丈夫だから、忘れろ。」 俺の言葉を遮るように首を振って、机に放っていたマスクをつける。 は? 今のを忘れろ? どの口が言ってんだ。 「烏丸が、誰を好きなのかは知んないけど。今のは黙って聞き流せないでしょ。」 「ホント、ただの一個人の意見だから…ごめんって。」 「違うよ、烏丸。」 俯く烏丸の横にドスンと勢いよく腰かける。 「烏丸。」 「……何。」 ぶっきらぼうに返事をする烏丸に俺は思いっきり抱き着いた。 「んな!なにすん…っ」 「ありがと!!!」 「はぁ?!ちょ、まじ離せって…」 「ありがとう烏丸。 俺のことをちゃんと心配してくれる奴がこんなそばにいるって。 お前がちゃんと俺のこと見てくれてるって。それだけですげー安心できる。 ありがとう。」 抵抗の声を無視してぎゅうぅっと力任せに抱きしめれば、苦し気にバシバシと背中を叩かれた。 おずおずと身体を離して、烏丸を見れば 「……………ホント、ばかだな。」 ってまた涙目で微笑む烏丸にもらい泣きしそうになった。

書籍の購入

ともだちにシェアしよう!