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77 断罪ーだんざいー

俺はひじょーに怒っている。 気に入らない。 あいつの態度。 一方的に萌志を傷つけて。 教室に戻れば、荷物を置いたまま姿を消していた。 気まずいのかもしんないけど、被害妄想なら勘弁してほしい。 堂々と教室にいてくれたほうがマシだった。 萌志は萌志で死んだような目でぼんやりとしているし。 「なぁなぁ、烏丸。萌志どうしたの?」 「……気になるなら渡貫が自分で聞けばいいじゃん。」 心配げに萌志を振り返りながら、渡貫が声を潜める。 「いや、俺冗談で『告白か?』ってLINeしちゃったんだよな、さっき。 でもあの様子は、萌志が告白されたんじゃなくてしたんだな。 そしてフラれ……もがっ!」 空気の読めない渡貫の口を半ば叩くように手で塞ぐ。 口だけじゃなくて、鼻も。 苦しいともがく渡貫をシラ――ッと見つめていたら、しゅんと大人しくなった。 手を放してやれば、 「あ、ガチな感じ?」 と、懲りずに人差し指を立ててきやがったからビンタをかます。 ふおぉぉ、と変な奇声を上げながらうずくまる渡貫を一瞥して溜息をついた。 ホントこいつ空気読めないよな。 そういうところ好きだし、嫌い。 渡貫の傍にしゃがんでその耳元に口を寄せる。 「いいか、ぽんぽこ。見ての通り萌志はへこんでいる。 お前がへこんだ時はどうしてほしい?」 「茶化さず黙って、いつも通り接してほしいれす…。」 「ですよね。じゃあ、分かるよな?」 にっこり微笑むと、渡貫は小さく頷いて、「お前ってホント、俺の扱い雑だよな~」と頬をさすりながら立ち上がる。 俺だってなるべく暴力なんてしたくないけど、まぁ仕方ない。 渡貫の空気の読めなさは、時としてかなりの爆弾になる。 それを不発弾にするか、投下される前に自爆させるのが俺の役目。 相変わらずぼんやりしている萌志。 女子に話しかけられても、曖昧な返事しかせず、相手も戸惑いの表情を浮かべている。 そして、日下部愛生。 全ての原因と見受けられる彼女は、数人の男女に囲まれて談笑している。 (………ふむ。) 彼女はなんとなく俺の苦手とする人種っぽいから、なるべく接触は避けたい。 やっぱり鳥羽だな。 あいつには納得がいかない。 後夜祭の時、耳の弱い萌志にわざと顔を近づけ、鳥羽の反応をみた。 あんだけ嫉妬深い視線を俺に向けておいて、『大嫌い』だ? 友だち同士の距離に嫉妬したのか、はたまた……。 まぁどっちにしろ、心配して近づいただけの萌志に『大嫌い』とまで言う必要があったのか。 萌志には悪いけど。 俺には友人として物申したい。 渡貫が関わるとややこしくなるから、こいつはバカのままでいてもらおう。 ちらりと視線を渡貫に向けると 「あ、お前今、ぜってー失礼なこと考えただろ。」 ……そういう勘の良さをもっと別のところで使ってほしいものだ。

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