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「え?なになになに。 嫌な予感しかしないんだけど。 やめて。ねぇ、やめてください。」 「あれ、ひっかかった。」 「おい、ぽんぽこ聞いてる?」 「んーー…っ取れた!じゃじゃーーん!!」 自慢げに彼が取り出したのは、少しラッピングが崩れたプレゼント的なもの。 ぱちくりと目を瞬かせている、烏丸の手にそれを渡した。 ピンクと白のギンガムチェックの包装紙。 その中から出てきたのは、スプーンだった。 烏丸は「?」と顔をしかめて、渡貫を見る。 「何これ。」 「スプーンだけど。」 「いや、それは分かるわ。」 「見てみ!ここ!」 渡貫が指さしているそれの持ち手を烏丸は目を細めて眺める。 そして同じセリフを溢す。 「……何これ。」 「え、たぬき。」 「…たぬき?いや、これは……クマだろ。」 「クマじゃねーよ!たぬき!」 どうやら持ち手にクマかたぬきが模られているみたいだ。 でも急に何なんだろう。 それは烏丸も思ったみたいだ。 「じゃあ、たぬきでいいけど。 急に何?」 「それあげる!」 「なんで?」 「お前この前誕生日だったじゃん!だから、それやるよ!」 キョトンとした烏丸は、スプーンと渡貫を見て、何故か俺たちを見る。 萌志は口元を拳で隠して、くつくつと笑いながら、 「おめでと、烏丸。 渡貫、お前が誕生日にたぬきのキーホルダーくれたからって。 お返ししたくてたまんなかったんだってさ。」 「……あんなの、ゲーセンでたまたま取れただけだったのに。」 烏丸はそう呟いて、スプーンをぎゅっと握った。 そして、渡貫にぼそぼそとお礼を言っていた。 あんなに俺にガン飛ばしてきたくせに。 萌志いわく『愛すべき馬鹿』らしい渡貫に振り回されている感が伝わってきた。 「……で。なんで、スプーンなの?」 「え、だって。 烏って光るもの好きなんだろ! だから、スプーンにした! かつ丼にはそれ使って!」 無駄にいい笑顔で渡貫は、そう言い放った。 烏丸もにっこりとした。 アヒル口がきゅっとあがって、綺麗な笑顔。 でも目が笑ってない。 「…そんなところだろうと思ったわ。」 「あれ、嬉しくなかった?」 「あーめっちゃ嬉しいです~渡貫君大好き~好きすぎて死にそう~。」 「ま~じでぇ~??」 めっちゃ棒読みなのに、渡貫は嬉しそうだ。 見ているこっちの気が抜ける。 萌志が言っていたことがなんとなく分かった。 彼をちらりと見ると、目が合って微笑まれた。 隣で萌志と渡貫が「やったね~」と言っているのを横目に、烏丸に視線を移す。 持ち手を眺めて、指でなぞっていた。 ゆらゆらと揺れていた瞳。 目元が優しく緩んだ。 (……。) でもその表情が見れたのは一瞬で、烏丸はトレーの上からかつ丼を取り上げる。 何故か一番嬉しそう渡貫を一瞥して、手を合わせた。 「いただきます。」 「はーい、いただいちゃって~。」 「うるせーな。てか渡貫、麺伸びてると思うよ。」 「あ?!い、いいい、いただきます!」 渡貫が慌てて箸をとる。 また萌志が笑いながら、俺に声をかけた。 「じゃ、食べよっか。」 コクリと頷いて、萌志と一緒に手を合わせる。 「いただきまーす!」 「……いただきます。」 そう言ったとき、目の前の2人が止まる。 俺なんか変なことした? ぽかんとしている2人に、俺は首を傾げてしまう。 箸に絡まっていた、渡貫のラーメンがちゃぽんと汁に戻った。 そして同時に2人が口を開く。 「「…しゃ、しゃべった……!」」

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