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117 嫣然ーにやにやー

部活が終わって、自転車を押しながら歩く。 お腹すいたな~なんて考えながら、校門をくぐった。 そこに、 「よ。萌志、お疲れ。」 生垣の傍にしゃがんだ、烏丸に声をかけられた。 よっこらせとギターケースを背負いながら、奴は立ち上がる。 「え、どーしたの。」 「いや、今から暇? 暇なら飯行こ。」 まぁ、あとは帰るだけだけど。 時計を確認すれば、時刻は6時過ぎ。 だいぶ日が傾くのが早くなって、辺りはだいぶ薄暗い。 双子たちはもう帰っているだろうか。 洗濯物とか、ご飯とか、その後の片付けとか。 両親が遅いから、子供らでやらなきゃいけないことは割とある。 めんどくさがって、お互いに仕事を擦り付け合う最近の双子。 結局、俺がやる羽目になっている。 まぁ、たまには自分たちで夜ご飯を準備してもらおう。 『兄ちゃん、烏丸とご飯食べて帰る。 真昼とちゃんと協力して、家事やってね。』 帆志にメッセージを入れて、顔を上げる。 「よし、大丈夫! だけど。 なんだよ、LINeしてくれればよかったのに。」 「見るか分かんないじゃん。待ち伏せしたほうが早いし~。」 そう言ってさりげなくスクールバッグをカゴに入れてくる。 既に俺のカバンでいっぱいだったのに、絶妙なバランスで収まった。 いや、でも漕いだら落ちそう。 徒歩圏内に住む烏丸は自転車がない。 当たり前のように2ケツをしようと後ろへ回ってくる。 「え、で?どこ行くの?」 「ん~、ワックとか?」 決めてないんかい。 ワックというのは、烏丸に散々悩みを聞いてもらっていたハンバーガーショップ。 俺も自転車にまたがって、烏丸を後ろに乗せてやる。 お腹もすいたし、もうそこでいいか。 「分かった。ワックね。」 烏丸のレッツゴーを合図にペダルを踏みこむ。 そして、帰るはずだった住宅地とは反対側の駅方面へと繰り出したのだった。 * 「いや~、それにしてもビビったわ。」 しなびたポテトを口に運びながら、烏丸は感慨深そうにため息をつく。 「ん??あー、暁?」 「そうそう。意外とさわやかな声してんな、あいつ。」 「そう? というか、2人が気づく前にもう既にしゃべってたけど。」 驚いたように目を開いて、ポテトを飲み込む烏丸。 「うっそ。」 「いやいや、ホントに。 『暁、どっち食べる~?』からの『萌志選んでいいよ~』って。」 「なにそれ。 聞いてねーよ、お前らリア充の会話なんか。」 鼻の頭にしわを寄せた烏丸は首を振る。 そうそう。 俺はリア充というやつなんだ。 あまりにも現実感がなさ過ぎて、あの夜のキスも夢なんじゃないかな~なんて たまに思ってしまうくらい。 大きめのバーガーの包みを開きながら、少しニヤついてしまう。 久しぶりのジャンクフードに少しテンションが上がって、頬張った。 「で、もうヤッた?」 「……っぐ?!」 いきなり烏丸にぶち込まれた質問に、対して噛んでなかった塊を思わず飲み込む。 咽て咳込みながら、あわてて飲み物に手を伸ばした。 首筋から顔にドカッと熱が貯まる。 ごくごくと一気飲みして、大きく息を吐いた。 「っげほ!…ッはぁぁ?!」 「いやいや。 なに慌ててんだよ。 ドーテーか。」 そんなどこかのと笑い芸人みたいなノリでツッコまれても。 さも当たり前のように聞いてくる烏丸。 こいつとそんな会話を今までしたことなかったから、妙に気恥しい。 袖口で口を拭って息をつく。

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