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「え、いや、してない、けど。」
「え、なんで?」
「ん?!なんでとは?!」
「せっかく付き合えたんだから、この週末に抜き合いくらいはしたかと。」
「ぬ…っき、あい、とかそういう話をここですんな!」
しれっとした顔でシェイクを啜る烏丸を睨む。
目が合うと、つまんねと肩をすくめられた。
周りに人いるのに。
それでも懲りないように、質問を続けてくる。
「え、じゃあ金曜日から何にも進展無しな感じ?」
「いや……。」
キスはしたと言おうとして口籠る。
これ言ったらおちょくられそうだよな~。
顔をちらり窺ってみると、『言えよ』と顎をしゃくられた。
まぁ、付き合えたのは烏丸のおかげもあるし…。
これくらいは言ってもいいかな。
そう思いなおして渋々口を開く。
「キス、はしました。」
すると、あっという間に烏丸の顔に笑みが広がっていく。
ストローから口を放して、だははとおっさん臭い笑い声をあげる。
あぁ、言うんじゃなかった。
「ピュア~!!!中学生みてーだな!
いいねーーー!www」
「ほら!やっぱり、そうやっておちょくるじゃん!」
「いやいや、いいと思うよ。
で?で?普通のだけ?」
「……思わず、ベロチューしちゃったら
…………びっくりされた。」
その言葉に、手を叩いて大喜びする烏丸。
こいつ、なんで俺たちのキス1つでこんなに喜べるんだろう。
ぷくく、と笑いをかみ殺した奴は、今度は意地悪な笑みを浮かべる。
「初めてなのに?初っ端から?突っ込んだんですかw」
「ねえ!お前その言葉の選び方わざとでしょ!」
「え????何言ってんですか??wwww」
わざとらしく肩をすくめて、烏丸はとぼける。
くっそ。
こいつ本当に腹立つな。
じわじわと熱を帯びる頬を手で仰ぎながら、フンと顔を背けた。
というか、男同士ってそんなにすぐヤるもんなの?
いやーでもこれは聞きづらい。
カミングアウトされているとはいえ、そういう対象が男なのでは踏み込んでいい領域が分かりにくい。
それに俺は今まで付き合ってきたのは女の子だけ。
まさか自分が同性と付き合うなんて思ってなかった。
でも好きな人を好きでいられることが幸せだから、そこまで抵抗はなかったけど。
暁を女の子扱いするつもりはないし、同じ性別だから分かることも多いと思う。
まぁ、少し潔癖な女子みたいなところがあるのは事実。
「暁は、人に触れるのが苦手なところがあるから。
そんなに、がつがついけないというか…。」
「え、そうなの?よく付き合えたな~。」
いや、本当にそれは思う。
何も知らなかったとはいえ、ハグとかしちゃっていたわけだし。
良く突き飛ばさなかったな。
煙草の匂いに交じって、暁の匂いがしたとき。
なんか、こう。
ぐわーってきたんだよな……。
簡単に腕に収まっちゃうし。
嫌がるというよりも照れてたあの顔もすごい可愛かった。
うん。
かわいい。
「おい、大丈夫?起きてる?」
「……え?」
「今、ぜってー鳥羽のこと考えてただろ。」
しまったな、顔に出てたか。
烏丸にひらひらとこの前で手を振られてハッと我に返る。
たぶん、妄想空想好きなだけしていいですよーって言われたら、1日潰せる。
でもこれ言ったら、ただの惚気だよな。
というか、烏丸は今もまだ誰かに片想いをしているんだろうか。
これは、聞いていいのかな。
言いたくなかったらそれでいいから、ちょっと聞いてみようかな。
「あ、のさ…。」
「ん?」
「一つ聞きたいんだけど。」
え、何改まって。と居心地悪そうな顔を烏丸はする。
確かに。
こんな風に改まって言うのはこっちだって決まづいけど。
烏丸の場合、軽いノリで聞いていいものかと少し憚られる。
俺の相談に乗ってくれていた時、凄く苦しそうにしていたから。
「烏丸は、その……。」
「俺が、何?」
「烏丸はさぁ……まだ、あの…
………片想いしてんの?」
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