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最後らへんは消え入るほど小さくて、掠れた声になっていた。 本棚に頭をもたせかけた萌志は、そのまま俺をちらりと見る。 「ネガティブなこと言ってごめん。 でも、一緒にいようって言った。 未だって気持ちは1つも変わってない。」 「うん。変わってない。」 「俺、暁のこともっと大事になってるから。大事にするから。 ね、本当に大好きだから。」 「分かってるって。 ほら、来な、萌志。」 迷子みたいな顔をした萌志に腕を伸ばして、その体を受け止める。 図体デカいくせに、おかしい奴。 不安になってもこうやって、全部お互い話せばいい。 解決策は見当たらなくても、半分こをしたら軽くなる。 上半身を捩る形で隣の萌志を抱きしめて、その後頭部を優しくなでる。 肩口に乗せられた頭。 その髪の毛に顔を埋めてみる。 鼻先にあたる体温と、シャンプーの匂い。 「暁…。」 「なに。」 「嗅いでる?」 「嗅いでねぇ。」 「嘘だぁ。」 くつくつと笑う萌志。 鼻を啜る音が聞こえて、俺も笑ってしまう。 「お前こそ、泣いてんじゃねーぞ。」 「泣いてませーん。」 「鼻水つけんなよ。」 「つけてませーん。」 俺の肩から顔を上げた萌志。 至近距離で目が合う。 電気のついてない暗い室内に差し込んだわずかな光がその睫毛を照らす。 濡れた睫毛は星屑を放っていた。 「ほら、泣いてんじゃん。」 「泣いてないってば。」 「泣き虫。」 「暁に言われたくないし。」 「俺は泣き虫じゃない。」 「泣き虫だよ。」 拗ねたような声を出す萌志の目元を拭う。 大人しく目を瞑った彼のまぶたにあるホクロをなぞった。 眩しそうに眼を瞬いて目を開ける。 不意に伸ばされた指が唇を撫でた。 「ね、暁。キスしていい?」 「それを聞くの、中学生までだぞ。」 「ははっ、恋愛初心者のくせに。」 「はぁ?うるっさ……、ん。」 ムッとして言い返す前にそっと塞がれる。 泣き虫、か。 萌志を好きになって、泣きたくなることが多くなった。 いつの間にか視界が揺らいでしまう。 今まで、死んでも泣くもんかって気を張って我慢していた分が一気に押し寄せたような。 今も嬉しくて、好きで、目の奥が熱い。 口を離した萌志が俺の顔を見てほほ笑む。 「ほら、また涙目。」 「萌志もじゃん。」 「好きだ————ってなってるからだよ。」 「変なの。」 お互いの目元に触れて、コツンと額を突き合わせる。 ちらりと視線を上げると、同じように萌志は俺を見つめていて。 ふにゃりと垂れた目じりが赤かった。

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