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第20話

「……っ、」 ぶわりと真っ赤に染まった和秋の頬を撫でると、あの、とか細い声が続いた。 「ん?」 「子作り、って」 碧がそらされて、ぽそりと和秋がつぶやく。不安そうな、震えるその声音に少しだけ言葉に詰まった。 僕は、和秋を離したくないけれど、彼は人間であり、僕は化け物だ。誰かに依存して、見離された時、僕は彼を殺してしまうだろうと、思う。予感でもなんでもなく、これは確信だ。 だからこそ、こんな若いうちから僕の傍にはいちゃいけない。本来の日常に戻してあげなくてはいけないのに。 だけど、 「……家族は、どうするの?」 「それは」 「僕は、和秋が望むならーーーー」 頬を撫でていた手をするりと滑らせながら首筋、脇腹を辿り、下腹付近で止めた。僅かに力を入れながら、和秋を見つめる。 「君が孕むまで、あげるよ」 「っ……!」 僕の言葉に音もなくさらに顔を真っ赤にした和秋は、不安そうに僕を見上げた。その碧がぐらりと揺れ惑いながらそらされた。 「ーーーーなんて、ね。冗談」 僕は和かな笑みを貼り付けて和秋から手を離すと、一度だけ髪を撫でた。 「……もう、寝ないと」 ね?と和秋の顔を覗き込むと、堪えていた雫が和秋の頬を濡らした。 「…俺、…忘れたくないです。群青さんを好きだって思う気持ちも、群青さんの事も、」 「和秋」 「群青さんは…………また、俺の中から消えてしまうんですか」 「……和秋」 「俺、俺が、……群青さんの事を忘れたくないのに、どうして」 「和秋……っ」 震える声で、和秋が僕に手を伸ばす。 指を絡めて握り返すと、じんわりと繋がった部分から体温が溶け出していく感覚に陥った。 「僕は、君が愛しい」 「っ、」 「だけど、ダメなんだ。僕は、君とは一緒に居られない」 「どう、し、て」 不安そうに揺れる瞳は、小さな子供のそれと変わらない。泣かせたいわけじゃないのに、こんな、不安そうな顔をさせたいわけじゃないのに。上手くいかなくて自分に苛立ちを覚える。 でも、 「ーーーー…ごめんね。和秋」 これが、最後だ。 僕が君に触れる、最後の口づけ。一瞬だけ触れて、和秋の体を腕に抱きしめてからもう一度、ごめんと呟いた。 何かを言いかけ気を失った和秋を抱き上げて、社を出る、と、 「ーーーーーーーー勝呂」 「……こら、牡丹と呼びなさい」 腕組みをした、牡丹が立っていた。呆れたように僕を見てから、ため息を吐く。 「手放すのかい?」 「……」 「群青」 「……僕といたところで意味がない。この子は人間で、まだ若い。これからの人生を僕で縛ってしまうのは、ーーーーだめ、でしょ」 「お前は、それが本心かな」 牡丹の声が咎めるように聞こえた。僕だって、傍にいたい。ずっと、傍にいれたならどれだけ幸せなんだろう。そんな叶いもしないことをどれだけ考えたって、無意味だ。 僕は、和秋のそばにはーーーー。 「お前が昔に殺した人間は、別にお前が触れたせいで死んだわけではないよ」 期待しては、失望して、負の感情に呑まれていった人間は、山の様にいる。今の世の中は、負の感情が満ちているし、僕はその空気の中で生きていけない。 だから、和秋が僕といるためには、俗世を離れて、親にも会えない暮らしを選ぶしか無くなる。それはきっと、彼にとっては悪いことでしかない。あれだけ、妹を探す事に執着していたのだから、会えなくなるのは、嫌なはずだと。 「僕に縛り付けてしまうのは」 たとえ、和秋がそれを望んでも。 たとえ、和秋が僕といることを望んでも。 たとえ僕が、和秋を愛していても。 きっと最後には、足枷になってしまう。 「それが、お前の答えかな。群青」

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