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Ennuyeux 4
「あぁ、なるほど。って、俺、別にゲイって訳じゃないですよ?」
「はぁ? 俺、男だぞ」
「わかってますよ。男の人を好きになったの、初めてですし」
今までつきあってきた人は全て女性だ。だから違うと首を横に振るう。
「そのことはどうでもいい。ただ、良く知りもしない、しかも男と恋愛する気はない」
諦めろと肩を叩かれ、帰ると言って行ってしまった。
いつもならそこで恋をあきらめているだろう。だが、龍之介に対しては諦めきれない。
しかも会いたい気持ちが暴走し、店に通い詰めてた挙句にぐいぐいと押していたらすっかり嫌われてしまった。
どうしたら距離が縮まるのかと、龍之介の事を想うたびに二人の距離は離れていく。
どうするべきか解らなくて、清美に相談した。
「あらやだっ」
はっとなる。そうだ、実の弟が男に好かれていると聞かされて気分は良くないだろう。
それすら思い浮かばないなんて。
「すみません。弟さんを好きになってしまって」
これでは龍之介だけでなく清美にも嫌われてしまう。
「あの、清美さん」
今更、聞かなかったことになんて事には出来ない。
ぎゅっと目を閉じて次の言葉に備えていれば、
「関町君、応援するわよっ!」
と両手を包み込む。
「え? 応援」
聞き間違いかと思ったが、任せておいてと清美が自分の胸を叩く。
「良いんですか」
「だって、恋愛は自由よ。それに本気なんでしょう? 貴方の想いを止める権利は無いわ」
と言ってくれた。
なんて優しくて頼れる人なんだろう。
「ありがとうございます」
その手を握り返せば、清美が何かを企むかのようにニヤリと笑う。
「……ん?」
気のせいかと目を瞬かせれば、いつもの優しくて頼れる上司の清美が目の前。
勘違いだったかと息をはき、宜しくお願いしますと頭を下げた。
誕生日には龍之介と一緒に過ごすことは出来なかった。食事に誘ったが断られてしまったからだ。
それでもめげずに当日も誘いに行ったが、忙しくなってしまい無理だった。落ち込む大雅を清美は慰めてくれ、ナツメの誕生日会に招待してくた。しかも龍之介の住む部屋でやるそうで、その日を楽しみに待つだけだ。
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