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Anniversaire 3

 関町は良く食べる男だ。若いというのもあるが、見ていて気持ちがいいくらいだ。 「おいおい、そんなにがっつくな」 「だって、龍之介さんの手料理ですよ」  いつの間にかファーストネーム呼びするようになり、何度か注意をしたものの呼ぶのをやめないので諦めて隙に呼ばせるようになった。  自分もファーストネームで呼んで欲しいと言われたことがあるが、それは頑なに拒否している。 「無理して食うなよ。余ったらタッパーに詰めて持たせてやるから」  二人の分余るのだ。ナツメには改めて作ってやればいいからと言う。 「良いんですか! では、そうさせて頂きます」  自分も少しだけ皿にのせて食べる。柔らかく美味しくできた。 「前も思ったんですが、龍之介さんってナツメちゃんより食べないですよね」 「俺は食うより見る専門。後はこれがあればいい」  とワインの入ったグラスを持ち上げる。 「あぁ、だからですね。食べてる時に視線を感じるのって」 「はぁ?」  そんなに見ていただろうか。 「お前の食いっぷりが凄すぎるから、呆気にとられてんだよ」  美味そうに食べるものだからつい見てしまうのだろう。だが、それを正直に口にしたら調子に乗りそうなのでそう言って誤魔化した。 「食べすぎですかね?」 「まぁ、良いんじゃないか」  まだ若いから良いけれど、歳を取ってから困るのは関町なのだから。 「うわぁ、関係ないって顔してますねぇ」 「は、解ってるじゃねぇの」  からかうと楽しい。清美が可愛がってしまう理由がすこしだけ解ってしまった。 「良いですよ~。ジムに通いますから」 「そうしろ。そうすれば店に来なくなって清々するし」 「うう、酷いですっ」  半べそをかきつつ、料理を口に運ぶ。これでは持ってかえる分までなくなりそうだ。 「関町、食うのは良いけど、少しは腹ン中、開けとけよ」 「え、あ、はい」  どうしてだろうという表情を向けるので、立ちあがり冷蔵庫からケーキを取り出して一人分カットし、関町の前へと置いた。 「ケーキ!」 「ガトー・オ・フリュイ(フルーツケーキ)」  おまけに苺を一つ多くのせてやった。 「良いんですか?」 「あぁ。関町、一週間過ぎたが、誕生日おめでとう」  その言葉に、勢いよく起ちあがるものだから、食器が音を立てた。

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