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Jalousie 2
女の子たちが顔を真っ赤にしている。長谷は甘いマスクをしている。向こうに居た時もとてもモテていた。
「じゃぁ、ガトー・ショコラ・オランジュを」
オレンジ風味のガトーショコラだ。これを気に入ってくれていて買っていた。
「こちらにどうぞ」
休憩室に案内すると蒼士の姿はなく、気を遣わせてしまったなと思いつつ、皿を持って店へと戻りケーキを受け取った。
「連絡もしないで店にいきなりきてしまってすまないな」
忙しいだろうと言われ、丁度休憩時間だからと答えた。
「タイミングが良かったかな?」
「はい」
珈琲豆をミルで引きドリップする。良い香りがしてきた。
「龍之介、ご飯まだなんだろう?」
「これをいれたら食べます」
珈琲が入り長谷の前に置くと食事の用意をする。
今日は牛丼だ。弁当を用意する時間が無かったので冷凍保存しておいたものを持ってきた。
「美味しそうだね」
「長谷さんに見られると恥ずかしいです」
向こうは本物の料理人なのだ。龍之介が作る家庭料理とは違う。
「こういうのが良いんじゃないの。あぁ、お昼を食べて来るんじゃなかったな。でも俺には龍之介の作ったガトーがあるっ、頂きます」
「どうですか?」
「うん、美味い」
本当に美味しそうに食べる人だ。
フランスに居た時、この表情を見る度に嬉しくて幸せで、彼に惹かれていたんだと思う。だが、気持ちを伝える事はしなかった。
再び出会い、気持ちは疼くが、思い出の一つでしかない。
「レセプションに招待するから」
「はい、楽しみに待ってます」
「さて、ガトーも食べられたし、邪魔しちゃ悪いから帰るな」
「また来てくださいね」
「あぁ。今度は恋人と一緒に来るよ」
きっと長谷の事だ。すぐに恋人が出来るだろう。その時は特別な生菓子を食べさせてやろう。
店の外まで見送った後、従業員たちに囲まれ、根掘り葉掘り聞かれた。 特に女子達は気になっているようすだ。
「店長のお友達って、カッコイイ人多いですよね。関町さんとか」
そこで関町の名が出てドキッとした。
確かに見た目は良い。普通に女性にモテるだろうに、なぜ、自分なんだろう。
「アレは中身が残念だぞ」
「えぇ、そうなんですか!」
きゃっきゃと盛り上がっている所に、ガラス越しに客が店の中へと入ろうと扉の前に立つところが見えた。
「さて、と。お客様だ」
よろしくねと声を掛け奥へと引っ込む。
午後の仕事のはじまり、龍之介は頭の中を仕事モードへと切り替えた。
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