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第4話
俺はあまり人と接するのが上手じゃなくてみんなから無愛想と言われてて
だから少しでも変わりたくて変わらなきゃいけないんだって思って下手に笑ったりしてた
けどそんな俺を親友はちゃんときにかけてくれた
「七海は七海なんだから変わんなくていいんだよ」
あの頃のあの言葉を俺はすごい大事にしてた、俺は俺のままでいいんだって
でも俺は、西谷輝と出会って俺らしくではなくあの人みたいになろうって思った
あのパン事件からしばらく経ってあいつを見かけたのはすぐだった
アイツは人気者で周りにはたくさんの友達がいた
「ナナミ」
アイツの声で突然名前を呼ぶからついつい反応してしまった、俺のことではないのに
アイツが優しい声で呼んだのが、【あの人】こと、名波直斗さんっていう見た目は綺麗系ででも喋るとバカっぽいけど優しそうな人だ
ちなみに俺たちと同じ同性であって
でも遠くから見てもアイツが名波さんのことを好きなのはすぐ分かった
多分気づいてるのは全くもって付き合いのない、アイツからは多分存在も認知されていないんだろう俺くらいだなって思った
甘い視線で名波さんを見つめてるのにその目の中には切なさも混じっていてただただ悲しかった
あぁ、そんな顔見たくないのに
俺だったら
なんて、そんなことを考えてしまう
名波さんはきっとノンケなんだから、きっと俺と同じで西谷輝も辛い思いをするに決まってるのに
もし、もし俺が名波さんのように明るくなれたら名波さんのように笑えたら
西谷輝は、アイツは、俺のことを少しでも意識してくれるかな
俺、大塚七海をもしかしたら好きになってくれるかな
そんな夢みたいなことを思って二人を見つめていた
アイツがあの人をナナミと呼んでいるのにまるで自分を呼んでるように感じてドキドキしてしまう俺を、アイツが知ったらきっと俺を馬鹿にするんだろう
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