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第8話
「バイト上がったら俺んちで呑まね?」
アイツから家に誘ってもらったのはその日が初めてで、舞い上がりすぎてたすぐに俺はふたつ返事をした
俺を呼んだのはきっとただの気まぐれ、アイツの近くにいたのが俺だからってだけだ
そんなことわかっているのに、でも俺は期待なんてしてしまう
今日、バイト先にあの人と、あの人の彼女さんが来てからのアイツの様子はいつもと違った
いつもしないミスをしたり、コップをおとしたり、注文を聞き間違えたり
分かりやすいくらいに動揺してるのがわかって、本当にあの人の事が好きなんだなと痛感した
アイツの事だからどんな事があっても動揺なんてしないで飄々としてるんじゃないかなって思ってたけど可愛いところもあるんだなって、胸を痛めながら思った
「じゃあ、俺ら帰るわ!」
「あぁ、今度はちゃんと来るって言ってから来いよ、まあお前はもう出禁だけどな〜
カナちゃんはいつでもおいで!サービスしてあげるから」
なんでだよ!ってあの人が言ってあの人の彼女さんとアイツが笑う
それがなんとなく切なく思えて見ていられなくなった
多分、あの人と彼女さんは翌朝まで一緒に過ごすんだろうなって
そう思うと、尚更アイツを悲しく思った
そしてあの二人が帰ってからアイツが家に誘ってくれて、早くバイト終わんないかな〜なんてことをかんがえてた
舞い上がりすぎて俺はすっかり忘れていたんだ
「七海、お前酒飲むのは俺と一緒にいるときだけだからな、他のやつとは絶対のむな」
中学のときの記憶、間違えて酒を飲んでしまった俺が親友から言われた言葉
俺はあまり酒に強くない、とはいっても記憶がなくなるわけではない
ただちょっと、思ったことを口走ってしまう、
すぐに正気には戻るのだけれど
もう少し早く思い出せばよかった
そしたら酒なんて呑まなかったのに、
アイツに
「俺のこと、名波さんの代わりにしていいよ」
なんて言うこともなかったのに
今更後悔しても遅い、俺達はもう戻れない
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