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第10話
「なに、言ってんだお前」
さっきまでポカンとしてた顔が急に真面目な顔になって、なんだが面白くなって笑えてきた
「あははっ、」
「てめ、何笑ってんだよ」
「いや、さっきまでアホ面だったのに、いきなりあんな真面目な顔するから」
あぁ〜お腹痛い、なんて俺が笑ってるのを尻目にアイツは
「お前があんなこと言うからだろ、笑ってんじゃねえよ何だよ、ナナミの代わりになるって、ふざけてんの?」
今度は静かに怒りを込めた目で見てくる
ふざけてる?そんなの俺が一番分かってる
口から出てしまった言葉に後悔してももう遅いから笑って少し誤魔化そうなんてしたけど、こいつには当たり前に通用しない
「ナナミの代わりなんてお前がなれるわけ無いだろ、お前だけじゃない誰もあいつになんてなれねえ、それに俺はそんなもん望んでねえ」
【ナナミ】の代わりなんてなれない
俺が自分に言い聞かせていたこと
それを、そのことをやはりアイツから言われてしまうと心が壊れそうなほどに痛い
そんなこと知っているよ、でもお前の口からは聞きたくなかった
だけれど俺も折れない、これが最後って思ってるから
最後のほんの少しの抵抗
「でもあんた言ってたじゃん、俺が、お前の友達に似てるって、それって名波さんのことだろ?」
「あぁ、言ったかもしんねえ、けどそんなん雰囲気と髪型、後後ろ姿だけだ、あとは全然似てねえ」
それも知っている、だって俺が似せたから
でも、だったら
「別に、俺を好きになれとか言ってるわけじゃないんだよ?俺だって別にあんたのこと好きなわけじゃないし、ただ俺だって今相手いないから暇なの」
うそ、ほんとは好きだ、切ないほど
お前に恋してる
相手だって今だけじゃない、ずっといたことがないんだ
「あの人に会えない時間に俺が相手してあげるし、あの人を抱けないんだから俺を抱けばいい」
そして、だって、っとつなげる
「だって後ろ姿は似てるんだろ?後ろから抱けばいい、そしたら顔見えないんだし」
それだったらあの人を抱いてるみたいだろ?
自分で言ってて悲しくなった
でも戻れないところまで来てしまってるから、もう戻れなくていい、拒絶されて二度と会わないと言われてもいい
だから今日は、今日だけは
これを思い出にするから
「ね?抱いてよ、俺のこと」
最後に夢だけ見させてほしい
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