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第11話

「ん、あぁッ」 「声出すんじゃねえよ、萎えんだろ」 ベットの軋む音と、身体がぶつかり合う音が部屋の中に響く 後ろから攻め立ててくるアイツは俺の小さな喘ぎ声さえ許してくれなくて、俺はぎゅっと唇を噛みしめ、声を殺していた まさか本当に抱いてれるなんて あの時、気づけば俺は今度は床ではなくベットに押し倒されていてそのままあいつにされるがままに抱かれていた 毎晩、アイツを思いながら弄っていたソコに意外にもアイツのはすんなりと入って 「なんだよ、だいぶ緩いじゃねえか、淫乱」 何て言われてしまった ちがう、俺は抱かれるのはお前が初めてだ お前以外まだ入れたことなんてないのに この先だって、きっとないのに でもそんなことアイツは思ってもいないんだろう アイツが俺の中で果てるとき、 「好きだっ、直人...っ」 と、俺の耳元で苦しそうにいった 顔を見ることができない俺はどんな表情をしてるかなんて分からない 俺の好きな奴が、他の人を想いながら俺を抱いている 俺をその人に重ねて 自分が望んだことだったのに、あの人の下の名前を呼びながら好きだ、と聞くとやっぱり.... でも思う後ろから抱かれててよかった、と 俺のこんな嫉妬に歪んだ顔を見られなくてすんだんだから アイツがあの人を想いながら、俺を抱く顔を見なくてすんだんだから 行為が終わった後 「おい?寝たのか??」 寝たふりをした俺にアイツは話しかけてきたけど、俺はそのまま知らんぷり アイツもまぁいいかと、俺に自分のシャツをかけてそのまま隣で寝だした アイツのこういう、優しさがたまらなく好きだ アイツが寝たのを確認してチラッと時計を見ると、日付は変わっていた 朝になればきっと俺たちはただの先輩と後輩に戻る ううん、それにすら戻れないかもしれない 俺にあんな事されて、戻れるわけ無いだろう でも良かったと思っている ずっと抱いてほしいと思ってた人に抱かれて ずっと好きだと思ってた人に抱かれて、 でもそれは俺としてではなく【ナナミ】としてだけれど 溢れた想いは言葉と共に落ちてくる 「代わりなんて、ほんとは嫌なのに」 アイツの寝顔を見ながら小さい声で囁く 「俺のことを、俺としてみてくれないの?」 ずっとずっと思っていたこと 「こんなに好きなのに、お前が、」 それが涙とともに溢れてしまって、シーツの上を濡らす 「輝のことが好きなのに」 そう言いながら寝てるアイツにキスをした 行為の最中、一回もキスをされなかった、そんなの当たり前のことなのだけれど 「これで、お前の目が覚めたら俺は運命の相手だったかも知んないのにね」 目を閉じたまま起きないアイツに寒い台詞を吐いて、自傷気味に笑う ファーストキスの味が甘いなんて、嘘 初めてしたキスはしょっぱい涙の味がした

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