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拾*

「俺は、ただ動くだけの(しかばね)であると…()って命ぜられるまま命を奪い、血を浴び、自ら鬼へと堕ちた…それで良いと、いつか誰かが私を殺めれば良いと……。」  川べりの近く、放られた茅屋(かやや)があったので靖久は青成と中へ入るなり、青成を脚にのせ、目を交わし、互いの舌根を絡むる。眼に熱をおび、汗あえる肌つき、たびたび絡ませるが足らない。手は離れるまいと指が絡む。 「靖久……貴様のせいだ…貴様のせいで……死が、恐ろしい……。」  わずか震える青成の体をもう片方の腕で強く抱きしめ、子をあやすよう舌で涙を舐め、まぶたに唇を落とす。 「死ぬな……愛し君がこの腕から失くなったら…耐えられぬ……。」 「靖久……靖久……俺も、靖久が…欲しい……。」  青成は今このときばかり御仏も鬼も忘るる。生まれてから何もをも欲したことはない。されど、靖久は欲しかった。  臥所(ふしど)である粗末な畳に青成を組み敷き、未だ(すす)()がわずか残る墨衣を細やかに脱ぎ滑らす。()(あらわ)される青成の肌は、白く、細やかであった。 「女子(にょし)のようでは…ない、だろう…。」 「…私は其方が愛おしいと思うておる。」 「俺だけ…は、恥ずかし、い、ではないか……靖久も…。」 「そうであるな…。」  恥ずかしがる様も愛らしい青成の懇願をきき、靖久も直垂(ひたたれ)の胸紐を解き肩脱ぐと日々護衛兵で揉まれておる体を顕した。ところどころに刀傷の痕も痛く残っておった。  青成は胸あたりの古い傷を指でなぞる。 「靖久は、た弱いのだな…。」 「はは……鬼の手合いは極まっておるのでな。」 「そうであるな……靖久…。」  青成は腕を伸ばし、靖久を求めた。靖久は青成の細やかな肌を(つま)()る。 「ん…んぁ……。」  男子とは思えぬ愛おしい声で青成はないた。青成もそれを恥じたのか手を口にやった。その振る舞いで靖久の男も息巻く。 「青成……も一度、ないてくれ…。」 「ふ、あぁ…や…そ、こ……。」  脚絆を解き、いたいけな下つ方も、白く細い脚も靖久に見えた。  男色、好色は貴族のうちにもあった。成人の靖久はその()はある故に密やかなるところを迷いなく手繰った。よだれでよくよく濡らした指でそこの口を撫でるだけで、青成は体をよじらせる。 「そ、ん…な…あ、んぁ……(まな)…あぁっ!」 「此処、か…青成の、良きとこは…。」  中へいれた指の腹で強く幾度もそこを押すと、青成のなき声が靖久の耳を惑わす。 「あ、指ぃ……。」 「苦しいか、青成。」 「(いや)……なんか、んん…おかしい……の…あぁん…っ!」  靖久の長い指をふたつ、みっつと青成が呑み込んで閉じられておった密かなところが広がり。 「青成……私をすべてもらってくれ…。」 「…ん……やす、ひさ……ほし、い……。」  しとどに流れる青成の甘露のおかげで滑るようになるそこに靖久は熱を充て、貫いた。 「ああっ!はぁ…ああ…熱、い…あぁ…。」 「せい…青成……あぁ…っ!」  靖久を欲しておった。そう云うように、青成は靖久を括る。靖久の腰に青成の脚が絡むと更なる奥へ導かれる。 「あられぬ…が……靖久、が、ほしい…。」 「私も、青成が、足らぬ…っ!」  淫らな音が靖久と青成の欲を掻き立てる。口に、奥に、繰り返される滑りがふたりを満たしていく。奥に突き上げるたび、青成はあられなく高い声をあげる。 「あ、あ、あぁ、靖久ぁっ!も、あぁあっ!」 「せい、出すぞ…っ!」 「あぁ、おれも、でるっ!あ、あああぁ…!」  肌を強く打つ音と一時(いっとき)、靖久も青成も果てた。あつい(いき)()しをしながら、目を交わすとまた舌を絡むる。水のような糸で紡がれたふたりは、肌を重ねた。 「青成……私と共に…後生も、共に…いてくれ…。」 「はは…俺も、そうありたい……靖久…。」  ようようと夜が更けるが、靖久の目にはすがらに青成の愛しき顔が見えた。

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