8 / 11
帰郷
「今日、ちょっと故郷に帰るね」
「え?」
それは急な話だった。
「な、なんで?」
トーストを齧りながら、俺はカムラに聞く。
だって明日はハロウィンなのに。
この街にとって特別で、それにカムラの呪いも一日だけ解ける日なのに。
「今日は僕と……僕の大切な人の命日なんだ」
「大切な人……?」
大切な人って誰?
ハロウィンより大事なこと?
俺と一緒にいるって、昨日約束したよな?
それって嘘?
色々聞きたいことが沢山あったけど、俺は聞けなかった。
「明日の夕方には帰ってくるから、一緒に過ごせるよ」
「……別にいいけど」
安心したのと同時に、ちょっとモヤモヤした。
カムラを見送った後、俺もバイトに行った。
バイトに行くと、相変わらず店長が鬱陶しかったけど、いつも通りかわした。
「ランくん」とパートのマリアさんに声をかけられる。
「ランくん、明日休み?何か予定ある?」
「別に……用事はないけど、どうしたの?」
マリアさんは申し訳なさそうに、手を合わせた。
「申し訳ないんだけど、明日孫の面倒を見なきゃいけなくなって……!休みを変わってほしいの」
「あぁ……別にいいっすよ」
カムラも夕方まで帰らないし、家にいても暇だし。
俺は明日もバイトに行くことにした。
ともだちにシェアしよう!