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ハロウィンの夜

ハロウィンの朝、カムラが作っておいてくれた弁当を食べた。 カムラがいない朝なんて、変なの。 ほんの少しだけ寂しくて、ご飯も何だか味気ない。 森にいた頃は、一人が当たり前だったからご飯が味気ないなんて思わなかった。 街はハロウィン一色で、かぼちゃをくり抜いて作ったジャック・オー・ランタンが飾られ、三角の旗、ガーランド?っていうものも風になびいている。 スーパーかぼちゃでも、オレンジ色のカボチャが山積みになって置かれている。 俺は精肉担当だからあまり関係なかったけど、野菜担当の人達が夜遅くまでカボチャを積み上げていたのを見た。 ハロウィンか……。 カムラ、いつ帰ってくるかな。 大切な人って誰なんだろ。 そんな事を考えながら、俺はバイトに励んだ。 ハロウィンセールだけあって、たくさんのお客さんが来て、てんてこ舞いだったけど、なんとかバイト終わった。 帰り際、あのウザい店長がやってきた。 「ランくん……今夜、空いてる?」 「いや、空いてないです」 「もういい加減、僕のものになってくれよ!」 「!?」 スーパーの裏口で大きな声をあげられ、一瞬怯んでしまった。 「こんなにも君を愛してるのに……」 「あ、愛してるって……俺を使い魔にしたいだけだろ?」 急展開過ぎて、訳が分からない。 「初めはそうだった……けど、君の時々色っぽい表情や香りが僕をそそるんだ」 もしかして、発情期の終わり頃バイト出た時にフェロモンにあてられた? だったら、すごくめんどくさい。 「ランくん」 そう呼びかけられ、タナカの目を見る。 何かに縛られたように体が固まった。 「なんだこれ!?」 「僕は魔法使いだからね、これくらい簡単さ」 一番魔法使いにしちゃいけないタイプのやつ……。 固まった俺の体を触り、尻尾や耳に触ってくる。 気持ち悪い。 「さぁ、契約を交わそうね」 そう言って、タナカは唇を寄せてきた。 け、契約ってそんな結び方!? 「ば……っ!やめろ……!」 抵抗するも、目をつぶることしか出来ない。 「何してるんですか?」 凛とした通る声。 目を開けると、褐色の肌に肩まで伸びた緩やかなウェーブがかった黒髪。 誰か分からなかったけど、黒い瞳には見覚えがあった。 「その子から離れてくれませんか?」 その男はタナカの体を無理やり剥がした。 その瞬間、金縛りが解け、尻もちをついてしまう。 「無理やりこの子に何かしようっていうなら、出るとこに出るので」 「……べ、別に何かしようなんて」 タナカは言い訳をしようとするも、語尾が尻すぼみになっていく。 男は俺を起こし、「もう彼はこのバイト今日で辞めますので」とだけ言って、マンションに帰った。

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