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第8話
彼氏の心が自分にないと悟った周防は、その日のうちに荷物をまとめマンションを後にした。もっとも身をよせる当てなど当然ながらない周防は、漫画喫茶やネットカフェを転々として過ごす。
高校を卒業してから今の就職先で働いていた周防は、散財することなく堅実に貯蓄していたおかげで当面の金に困ることはなかった、
とはいえいつまでも根無し草では金も底をつく、職場にほど近いアパートを契約して住むことにした。ボストンバッグにつめ込んだ洋服と靴が二足、スマホや財布それに自身の身体と私物は少ない周防は、もともと物欲がなく以後も質素な生活を開始した。
彼氏と別れてふた月、ひょんなことから彼氏の噂を耳する。周防がマンションを出ていった後すぐに女と同棲を始めた──そこまでは聞き及んではいたのだが……。
大学を卒業すると同時に息子を周防と引き離す──父親が立てた一連の計画を彼氏も知っていたらしい。けれど周防に告げることはなく、何食わぬ顔で四年間を過ごした。
彼氏にとっての四年間とは、周防とできる限りを楽しみ味わいつくし飽きるまでの時間だった。そう割り切ってしまえば未練もなく、それどころか気持ちが急激に冷めてくる。
早々に手ごろな女を口説いては浮気をくり返し、最後に手を出した女に至っては本気になってしまう。本命ができた以後も周防とはずるずると関係を持ちつづけ、くだんの別れ話につながった。
周防がその事実を知ることになったのは一本の着信による。相手は周防の母親だった。着信番号を見て一瞬たじろいだもの、無視はできずに応答した。
初めはテンプレどおりの涙による謝罪、今更なんだこの母親はと周防も呆れながら耳を傾けていた。そんな前提を経て本題へと移ったところで真実を知る運びとなる。
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