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第23話

「周防ちょっとこい」  客も引け、今のうちにと商品の在庫をチェックしていた周防に店長からお呼びがかかる。難しい顔でスタッフルームに呼ぶなど大体の察しがつくと、バインダーを閉じながら深くため息をつく。 「失礼します」  重い足を引きずるようにして入室する周防に、ベンチに腰かける店長から鋭い視線を向けられる。逃げなど与えないといった表情、すぐに低音の声が周防を詰問する。 「座れ。それで、今度はどんな爆弾を抱えてるんだ」 「爆弾なんて……抱えてませんよ」 「嘘つけ、それで隠してるつもりか。おまえは喜怒哀楽がダダ漏れなんだよ、どうした言ってみろ。また男か」  何もかもお見通しらしい。あごで誘導されるまま彼のとなりに腰かけると、西園寺との馴れ初めや旅行であったことを順を追い話した。 「──なるほどな。まあ周防の選んだひとだ、俺がとやかく言うことじゃないが。おまえはそれでいいのか?」 「……」 「西園寺さん──彼氏と謎の女、風呂んなかでヤッてたんだろ?」 「ヤッてなんて──……夜中だったし、それに湯けむりで視界も悪かったから……もしかすると俺の見間違いかも」 「見間違いで女の喘ぎ声が聞こえるって、その露天風呂AVでも流れてんのか」 「……」  明け透けに論破されては返す言葉もない。  確かに視界は悪かったが西園寺に知らない女性がまたがっていたのは事実、そのうえ情事を知らしめる蜜声まで響けば言い逃れなどできないだろう。  空が白むまえに何食わぬ顔で部屋に戻ってきたが、それまで西園寺はあの女とよろしくやっていたのは夢ではない。布団にもぐったはいいが、周防は起床時間まで一睡もできなかったのだ。  自分の布団に戻るかと思いきや、あろうことか西園寺は周防の布団に入ってきた。しかも背を向けて寝たふりをする周防には気づかず、平然と腕に包み込み眠りにつく厚顔さに心が凍りつく。  今しがたまで女を抱いていた腕に包まれながら、周防は愛する男によって心を殺されてしまった。

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