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第49話
lineは開かれたままだったのだろう瞬時に既読となる。
今頃どうなっているのか見ものだ。返信内容に顔をしかめているか、妻から客人の名を聞かされ雷にでも打たれているか。どちらにしても周防にはメシウマだった。
カップをソーサーに置きテーブルに戻したところで真打の登場だ。
「──櫂……どうして」
リビングに現れた屑な男は悠然とソファに腰かける愛人を見るなり硬直する。
妻に客人が訪ねてきた旨を聞き、その名前に驚愕してひとり駆けつけてきたのだろう。蒼然と目を瞠る西園寺が若干の震え交じりな声音で訳を問い、それには周防がいつもの調子で返す。
「よう、荷造りは終わったのかよ。迎えにきてやったぜ。しっかしさ、すんげえ家だな。つか豪邸じゃん。いつか一緒に暮らそうとか言ってたよな、マジで俺ここに引っ越してこよっかな。
その場合、俺らの関係ってどうなんの。一夫多妻とか? つか俺男だけど。ああそっか、一妻多夫にすりゃいいじゃん。俺ゲイだけどさ、藤隆の奥さん美人だしもしかすっとヤれるかも。俺がんばっちゃうよ」
青くなったり赤くなったりと、器用な顔色を披露する西園寺に好戦的な視線を向けながら周防は思いつくままを口にした。
すらすらと言葉が飛びだしてはいるが、けれど半分以上は即興であり周防も自身が何を言っているのか理解はできていない。
唖然と棒立つ西園寺の背後に一足遅れて妻が顔をのぞかせ夫を急かせる。
「どうしたの藤隆くん、ぼんやりとして。ご友人を待たせては失礼よ」
小首をかしげ不思議そうな表情をしながらも、妻は笑顔を崩さない周防の許へ夫の背中を押して誘導してやるのだった。
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