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第57話

「くっそ、痛てえな……退けよ」 「黙れっ、俺に口答えをするなっ!」 「うわっ、ちょ、痛って……おい、やめ、やめろ」 「やめろ、本気か? 男が欲しいんだろ、なら黙ってよがってりゃいい。おまえさえ我慢していれば、いくらでも俺をくれてやったのに。 だがまだ間に合う、櫂が水緒を取り成してくれればいい。そうすれば、また俺たちは以前のように愛し合えるんだ。もうまえの彼氏のときみたいな想いはしたくないだろう」 「俺を取れ、櫂。絶対に俺はおまえを見捨てたりはしない」という勝手な物ぐさに、周防は身体の底から身震いする。 「離せよ。どこで安酒浴びてきたか知んねえけど、おまえ頭イカれたんじゃねえのか。どうして俺がおまえらの仲を取り持ってやらなきゃなんねんだ、身ぐるみ剥がされて地獄に堕ちて死ね」  あまりの悔しさに暴言を吐きながら涙がこぼれる。  周防とてプライドがあるのだ、ここまで虚仮(こけ)にされて元鞘になど戻れるものか。  寝技は西園寺の特技なのだろう、両手をまとめて頭部に縫い止められびくともしない。けれどみすみす侵されて堪るものか、身体をよじり必死の抵抗を試みる。  だが同じ男であれど、上位を取り押さえつけるほうが圧倒的に有利だ。しかも今日は腰穿きのジーンズ、ベルトをしていない。容易に脱がされ下着に手をかける西園寺、厭わしさに周防は身の毛がよだつ。

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