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第70話
それから月日は流れ離婚騒動から約一年。
ゲイであったはずの周防は水緒にだけ欲情することができ、自身の復讐のため他に目を向けることもなく彼女だけを大切にしてきた。
もっとも愛しているかと訊かれれば答えはノーだが、それでも手酷く捨ててやれという残忍な思いは薄れつつある。それも水緒の朗らかで優しい性格が周防の心を修復したからだろう。
このままともに暮らし、結婚をして子供を儲け育てるのも悪くはないか。愛してやることはできないが、けれどそれを悟られることなく良夫を演じる自信はある。
周防は彼女と生活をともにし、ふと安らぎを与えられていることに気づく。そろそろ憎しみは捨て前進しようかと思い、以前世話になった弁護士に連絡を取った。
けじめをつけるため今のあやふやな関係を終わらせ、夫婦になる旨のプロポーズを前提に相談をするのだ。結婚後に揉め事は避けたい、事前にあらゆる契約を決め取り交わしておく。
それら書類に起こしてもらうための相談だった。
だがその行動が周防の心を三度殺すことになろうとは思いもよらなかった。世話になる弁護士は水緒の友人が紹介した者で、よってこれまでは彼女に都合の悪い事実は伏せられていた。
けれど紙切れ一枚の関係であれ婚姻とは法に認められてこそ成り立つもの。法を遵守 すべき弁護士として、法に関わろうとする周防に隠し通すわけにいかない。
水緒と西園寺にまつわる過去と関係を、周防は弁護士事務所で聞かされるのだった。
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