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第78話

 西園寺家の後継者が途絶えたことにより事態は大きく変貌した。一時は藤隆に白羽の矢が立ったが、それを彼が辞退したことにより本家の血筋から離れ当主は分家へと移る。  周防が暮らしている屋敷の名義は今では水緒となっているが、以前は父親であり離婚後は母親に名義が変更された。  空き家だった屋敷に藤隆と水緒が入籍し暮らすようになってからは、国家資格を取った彼が藤隆に名義を変更。その後ふたりが離婚すると水緒へと屋敷が移る。  ふたりを脅かすだろう危険因子があれば法の名の許それを排除し、母親の想いを酌み陰ながら水緒たちを守ってきたのだ。  ならばどうして藤隆を法で報復したのか。ふたりを守ると言いながら息子である藤隆に立ち直れないほどの制裁を加えるなど、それこそ母親が危惧し案じた事態ではないか。  腑に落ちず考え込む周防。  そこへ弁護士は「好きなんです。水緒様のことが」と本心を打ち明けた。  あまりにも唐突な告白に周防は呆気にとられたが、すぐに我に返ると「は……なに言って」それから「ふざけんなよ」と顔を赤くさせ怒りをあらわにする。  愛情を持つことはできないが、けれどすでに同棲しており結婚の意思もある者に対し弁護士が私情を挟むなど言語道断。たとえ岡惚していようが、それを周防に告白するなど神経を疑う。  これはライバルに対し宣戦布告と取っていいのかと戦慄く周防に、弁護士は真面目な表情で居住まいを正し責任と誠意を問う。 「すでに水緒様は藤隆様に深く傷つけられました。この一年のあいだに彼女は表情も豊かになり、一時期には失われていた笑顔も戻って私も安心を致しました。 それは周防さんのおかげでしょう。ですがあなたに彼女の生涯を背負う覚悟がおありか。結婚はただの手続きではない、人の命という一生の責任を持つことです。 周防さんはゲイですね。ですが水緒様とおつき合いをされ、彼女もあなたを受け入れている。おつき合いだけなら構わない、けれど妻を娶り家庭を持ち子を儲け養う。 ふたりで力を合わせ子を羽ばたかせたあと、人生をふり返り互いに幸せだったと言えますか。向かい合い笑顔で感謝を伝えることはできますか。そこに一縷の罪悪感はございませんか」

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