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第79話
周防から怒りが抜ける。
弁護士の問いにひとつたりと言い返せなかった。水緒とつき合ったのは西園寺に復讐がしたかったからだ。彼が戻ってこられないよう同棲をして屋敷を乗っ取ったのも復讐の一環。
愛する者に裏切られ傷ついたのは周防だけではない。水緒もまた西園寺に裏切られた被害者なのだ。しかも水緒にとって周防は浮気相手、憎むべき泥棒猫ではないか。
けれど水緒は周防を受け入れ心さえ許してくれた。そんな彼女に周防も応えようと、この一年無意識に尽くしてきたのだ。それもまたひとつの愛なのではないか。
復讐に支配され心を鬼にしていた周防。だが弁護士の言葉により目が覚めた。視界が一気に開けたような感覚とでも言えばいいのか、心に深く刺さったとげが取れ我に返る。
「……あんた知ってたんだな、俺が水緒をつかって藤隆に復讐していたって。ほんとう馬鹿だよな俺、図星さされて頭に来てるようじゃあんたに敵うわきゃねえよな」
憑き物の取れたような晴れやかな表情になると、深くため息をつき「悪りぃ。今日の相談はなかったことにしてくれ」と周防は頭を下げた。
それから弁護士には水緒との不純な関係を終わらせることをつたえると、彼女をよろしく頼むとふたたび頭を下げて事務所を後にした。
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