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第6話

 普段なら適当なこと並べて女口説くなど造作もないが、どうしたことかこのときばかりは巧く口が動きゃしねえ。おいおい、これじゃまるで初恋した中坊野郎みてーじゃねえか。  情けねえぞ俺と自分に発破をかけ気合いをひとつ。よしと前進するのみだ。 「ああ、すみません。お留守かと思ったので出直そうとしてたのですが……香奈さんの妹さんですか。俺──いや僕”時任(ときとう) 一将(かずまさ)”といいます。香奈さんは在宅ですか?」 「いえ……あの……姉は、まだ戻ってません。それから、その、僕、は弟で……」 「あーやっぱ留守っすよね。そうですか、弟……──弟!?」  今なに言った。あり得ねえ単語を聞いた気がしたが。つか弟ってなんだ、弟は男につかう総称だろ。だが俺の目が見ている子はどうみても女、しかもやたらレベルの高けえ顔面偏差値。  脳内を高速で記憶を遡りデータ処理してみるが、これまで俺が生きてきたなかで”これぞ美少女”っつーぐれえ上玉な女は見たことがねえ。つか男か。  二十四年生きてきたなかで俺が女とつき合った歴史が十三年。ちなみに童貞を捨てたのは十四の夏、中学二年のときにつき合った年上の女で、逆ナンされて半年ほどつづいた。  自分で言うのもなんだが俺はかなりモテる。中学高校とバスケで体を鍛えりゃそれだけで女は寄ってきたが、伸び盛りで身長は百八十越えた頃には年上女が群がった。  頭の出来はそこそこだが、顔のつくりは上出来だと自負する。しかもセックスは超絶技巧パンツんなかのイチモツも半端なくでけえとなりゃ、俺に依存する女は絶えなかった。  けど今はそんな俺のテクや過去のデータなど役には立ちそうもねえ。目のまえにいる美少女は実際には男とか訳わかんねえ事態だ、いったい俺はどうしたらいいんだ。  とりあえず話しかけてみる。

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