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第39話

 終焉  走行中、サービスエリア、目的地到着まで。おまえらは十姉妹かっつーぐれえ喋る喋る、もう誰にもとめらんねえ。ピーチクパーチクと未だ頭ンなかでリフレイン中だ。  ちなみに一度ひらけば二度と閉じねえ口の持ち主は、香奈とその製造元である母親。おかげで俺ら男三人は現地につくまでの車中で疲れ果て、今はコテージでぐったり骨休め──いや、脳休めしている。  ディナー用の肉や野菜を冷蔵庫に収め、風呂やトイレなど確認して室内を把握。ひと休みしたあとは辺りを探索するかと音稀とふたりベッドで予定を立てる。 「──なあ音稀。距離はあるけど滝があるらしいぜ、見にいってみねえ?」  キャンプ場の周辺が紹介されたパンフレットを見ながら音稀に提案する。すると「いいですね」と即答。俺が誘うと嬉しそうにオッケーしてくれっから俺まで嬉しくなっちまう。  パンフレットを放り投げ音稀を抱きしめると、「じゃあさ、音たてねえよう抜けだそうぜ」と耳打つ。もちろん地獄耳魔女対策に超小声。  邪魔者どもに察知されっと、せっかくの休暇が台無しにされちまう。音稀の家族を邪険にするは申し訳ないが、それでも俺は俺自身の幸せ(・・・・・・)を取る。  音稀にキス。そんで「じゃあいくか」と気合を入れてベッドから飛び降りた。 「ちょっと一将、なにサクサク先進んでるのよっ。女がふたりいるってこと考えてよね、ったく気のまわらない男。そんなだから女に愛想尽かされるのよ」  ぶちぶちと背後から文句が届く。  眉も目もつりあげた凶暴な女。鬼瓦。邪魔者一の香奈が母親と手をつなぎながら坂道を歩きつつ、もっとスピード落とせと注文をつけてきた。  俺と音稀それに親父は前方を、香奈と母親は後方をやや遅れ気味に進む。つか何で俺なんだ、親父に言えよ。しかも遠慮なしに悪口まで言うな、泣くぞ。  俺は呪われてんのか。女を弄んだ罰か。だったら今後は一生涯、俺の人生かけて音稀を大切にすっからもう許してくれ。

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