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第49話
何度も無実を訴えるうちに、ようやくもがき拒絶する音稀の動きがとまった。ンで俺の顔を見上げると、音稀は「ほんとう、何もシてない?」と訊く。
それには即座に「シてねえ」と断言。すると音稀は表情を和らげ、「よかった。疑ってごめんなさい」と謝る。けどつづけて「じゃあ、どうして下半身が裸だったの」と指摘され俺ふたたびピンチ。
とっさに言い訳がでてこずまごつく俺にひと言、「やっぱり姉さんが言ってたことって、ほんとうだったんだ」と絶望の声をあげ、音稀の目からまた涙が溢れて泣きじゃくる。
足から崩れ落ちるように力の抜ける音稀。抱きかかえながら、ひたすら俺は「悪い。ごめんな」と謝るしかない。けど口でされたつっても、ありゃあ不可抗力だろ。
かなり理不尽な気もするが、今は音稀の許しを得る方が先決。平身低頭の思いで謝罪を重ねていると、それまでひきつけを起こしそうなほど嗚咽していた音稀がぴたりと止む。
少しの沈黙。ぼそぼそと音稀が話しだす。
「……やっぱりあの女は許しちゃいけない」
「は? 何が──って、おい、どうした。どこに行くんだ」
俺の腕から逃れると音稀はふらふらと歩きだす。ぶつぶつと聞き取れねえほどの小さな声で訳の分かんねえことをつぶやく様子は異様で、いつもの音稀とはまるで別人じゃねえか。
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