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第50話

 目もなんかイっちゃってる感じで、こんなこと思ったら悪いが「不気味」だと感じてしまった。俺の声も聞こえてねえのか、操られるように夜道を進む音稀。その後ろを俺はつづく。  月明かりに照らされた音稀。そして俺は気づいてしまった。 「おまえ……それ……もしかして、血……じゃねえの」  正面からでは判らなかったが、背後に立ってみてそれが目に入った。シャツの裾を染める赤い飛沫、リアルでお目にかかったことはねえがホラーでは定番のアレ。返り血にそっくりだ。  いくら呼びとめても反応のなかった音稀が、血のワードを問いかけたとたんに動きが止まった。そしてゆっくりふり返ると、音稀はぎょっとするような表情で俺を見る。 「ああ……ふふ、気をつけたんだけど。このシャツも処分しなきゃ」  そう話す音稀は妙なものにでも憑りつかれたような笑顔で、けど目だけ笑ってなくてすげえ怖い。シャツを脱ぐと手で丸め、「邪魔者はあとひとり」とうっとりした口調でつぶやきまた歩き出す。  嫌な予感しかしねえが、とりあえず音稀のあとを黙って追跡するっきゃねえ───

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