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第54話

 俺は特定の恋人は持たねえ主義だったが、気に入った女がいりゃダチを誘って乱交を楽しんでいた。ハプバーも楽しみのひとつで、店に来た知らねえ客同士が行為に耽る。  連れの女は俺を彼氏と思ってついてきているわけで、俺が知らねえ女とセックスおっ始めりゃ当然キレまくる。けど女も次第に店の雰囲気に飲まれ、気づけば見知らぬ男のうえに乗り喘ぐようになる。  でも一度でっかい失敗をしてからは行かなくなった。性質の悪りぃ女に引っかかったっつーか、性病を移された挙句に連れの女にも感染させちまって、それが元で女は不妊症になったらしい。  女の親御さんに慰謝料だ治療費だ責任とって結婚しろと突られたが、まだまだ遊び足りなかった俺は結婚とか冗談じゃねえとそン時は必死で、知らねえ男に跨った女が悪いとつっぱねた。  今から考えっと酷でえことしてきたな俺と思うが、それ以来ぴたっと足を洗ったし音稀が口にするまで忘れていた。まさかとは思うが、そんな馬鹿な俺に呆れ別れ話をされるとか?  暗い森、月明かりで不気味にライトアップされた滝。別れ話するにはシチュエーションばっちりじゃね。それなら終始音稀が笑顔だったのにも合点がいく。  嫉妬のあまり相手に苛立ちキレまくり爆発した残りかすっつえばいいのか、リミッターふり切っちまうと後は心が冷めひたすら虚しいだけで愛情も萎えちまう。  すると一気に愛情のメーターも急降下、どうでもいい相手に何も感じなくなるとは過去の女談。別れ話するにも復讐するにも、そのときが楽しみで笑顔になっちまうんだと。  まさに今の音稀がそれじゃね。つか嫌だ、捨てられたくねえよ。  焦り訳が分かんねえっつー感じで取り乱しながら「俺が悪かった。お願いだ、俺を捨てないでくれ」と謝る。つか何に対して謝ってるかなんて俺は知らね。けどとにかく謝る。

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