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第62話

「──けど一将さんが奥様と離婚されて状況が変わってしまった。それまで僕の友人で落ち着いていた姉でしたが、彼女もまた一将さんが好きだったので悪い虫が疼くようになりました。 それは普段から会話にのぼるほど顕著なものだったので、これはヤバいなと内心で焦っていました。もっとも表情には出しませんでしたが。 そんなときです、一将さんが訪ねて来てくれたのは。事情をうかがって、初めて姉に感謝をしましたよ。あなたと接点を持たせてくれたのですからね。 後は少しずつ一将さんと距離を縮めていこうと行動に移して今に至る──というわけです。ですがあの女は隙あらば一将さんに唾をつけようと、周りをうろつき目障りでした」 「それで今回のイベントを企画したわけです」──さも名案だろとでも言いたげな表情仕草で俺に了知させようとする。いや、分っかんねえって。  眉をひそめる俺。それがどうストーカー野郎殺人事件につながんだと訝しんでいれば、音稀は「この馬鹿がパーティーの参加者になったのは予定外ですが」と言葉を切り、ふうと息を吐きつづきを話す。 「まあもっとも後々こいつも始末するつもりだったので、まとめてプレイヤーになってくれたのは一石二鳥ですね。ふふ、アリバイを練り直さなきゃ。 そうそう。僕は一将さんにひと目惚れしたって言いましたよね、それからつき合えるようになってほんとうに幸せだったんですよ。 好きで好きで辛いくらい好きでした。一途にあなただけを愛していました──ほんの二週間まえまでは。浮気してますよね、一将さん───姉さんと」  えっ? なんで──どうしてそれを───  そう訊こうとしたが叶わなかった。つぎの瞬間、俺の脳天をあり得ねえほどの痛みが走り目のまえがブラックアウトしたからだ。  最後に聞いた音稀の言葉「さあメインディッシュの時間です」。なんだそりゃ───

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