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第66話

 よく見知った女。一度は夫婦生活をともにした元嫁、慶子が現れた。  ぎらつく目と憎しみに歪む不気味な笑み。しかも手には拳銃が握りしめられている。ようやくわかった、今回の首謀者は元嫁、こいつの計画だったのか。慶子が戯れ言を吐く。 「こんばんは一将。どう、楽しんでる?」 「はあ!? ふざけんなよっ!! おまえ自分が何してるのか分かってんのか、犯罪だぞ」 「くっくっ、ああっはっはっ。知ってるわよ、そんなこと。でもバレなきゃいいのよ、バレなきゃ。ほら、死人に口なしって言うじゃない」  それだけ話すと、今度は香奈に「ほら、香奈。ベッドにあがりなさい。あんたの好きな男でしょう、一緒に寝なさいよ」と皮肉った。  頭にきた俺は「おまえイカれてんのかっ!!」と怒鳴るが、「そうね。けど私をイカれさせたのはあなたの責任よ」と言われ反論できなくなっちまう。  ろうそくの火で光る黒い銃口、それが俺と香奈のほうへ向いている。いつ弾が飛んでくるか分からねえ恐怖と、慶子の異常さが俺を震え上がらせた。  ふたたび「はやくしなさい」と慶子にたしなめられ、おどおどと香奈はベッドに上がってきた。俺のとなりでガクブルする香奈、顔色は蒼白から土気色に変わっている。  香奈がベッドにあがったところで、それまで傍観していた音稀が元嫁のとなりに移動、俺に「フィナーレです」と言ってきた。 「ああ……? な、なんだよ、フィナーレって」 「お別れって意味ですよ」  まじか。音稀の台詞に愕然とした。間違いねえ、これは死亡フラグだ。

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