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三都幻妖夜話(2)大阪編 1-4 トオル | 椎堂かおるの小説 - BL小説・漫画投稿サイトfujossy[フジョッシー]
目次
三都幻妖夜話(2)大阪編
1-4 トオル
作者:
椎堂かおる
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1-4 トオル
喘
(
あえ
)
ぎが
漏
(
も
)
れて、俺はそれを
堪
(
こら
)
えようとした。ひとりで
悶
(
もだ
)
えると、なんか恥ずかしかった。アキちゃんと一緒にでないと。 声うるさいって、いつも言われる。そういう時のアキちゃんは、ちょっと意地悪で、お前の声はうるさいなあって俺を笑って、それでももっと責める。 たぶんアキちゃんは俺が声出すのは好きなんや。それを聞きながらやってる。だから今も、聞いてるんやろ。だから余計に、恥ずかしいような気がするねん。 「アキちゃん、嫌や、俺だけ気持ちよくせんといて」 上手いなあと思って震えながら、俺はアキちゃんに頼んだ。 前は下手くそやったのに、上手くなったなあ、アキちゃんは。 そらそうか。半年間、毎日毎晩やってれば、上手くもなるか。 アキちゃんは、俺が
悦
(
よろこ
)
ぶのが気持ちいいらしくて、いつも
悦
(
よろこ
)
ばせようとしてくれる。アキちゃんの気分が燃えてたら、一晩に
何遍
(
なんべん
)
もいかされて、まさに昇天する心地やで。 けど俺は、自分だけいったら飢えんねん。知ってるはずやろ、アキちゃん。
交歓
(
こうかん
)
せなあかんねん。お
預
(
あずけ
)
け食ったら体が飢えるけど、アキちゃんにお
預
(
あず
)
け食わせたら、もっと飢えんねん。 「抱いてよう、アキちゃん……」 なんか本気らしい舌使いに、俺は泣いた。朝は弱いねん、俺は。一発抜いてから、もう一回してくれんのか。そういう感じが全然せえへんのやけど。アキちゃん。 「やめてよ、そんなんしたらあかんわ。俺、
保
(
も
)
たへんよ、アキちゃん……」 でも、あんまり気持ちいいもんで、
銜
(
くわ
)
えられてんのを無理に離そうとは思われへんかった。 捕らえられてんのは俺のほうで、アキちゃんやないって、そういう気がする。こういう時にはいつも。 アキちゃんにしてもらうと、なんでも気持ちいい。こうして
舐
(
な
)
められんのも、手
繋
(
つな
)
いで寝るのも、触れるだけのキスでも、ただ見つめ合うのでも、暖かい力に
浸
(
ひた
)
されてる感じがする。 ほんまはただ
傍
(
そば
)
にいるだけで、俺は飢えへんのかもしれん。でも、それだけやと切ないねん。 それはもしかしたら俺が、血を吸う外道やのうても、みんなそうなんかもしれへん。ただアキちゃんが好きなだけで、俺が化けモンやからやない。ただ好きなだけなんや。 「アキちゃん、もうイキそう……抱いてくれへんの。後でしてくれるんか……」 我慢しながら、俺が
訊
(
き
)
くと、アキちゃんは俺を
舐
(
な
)
めながら答えた。 学校行かなあかんねん、用事があるんや、と。 やりながら
喋
(
しゃべ
)
らんといてくれ。ああもう、あかんやん。 「アキちゃん、もうあかん、やめて……やめて」 アキちゃんの顔を両手で
掴
(
つか
)
んで頼む、俺の声は半分悲鳴やった。やめさせようとしてんのか、もっとやってくれ言うてんのか、自分でもわからへん。たぶん両方やった。 もうやめなあかん。アキちゃんの口ん中でいってまう。 それやとまずい。アキちゃんの中に出てまうやん。 でも、それを、やってほしい。俺のこと、飲み干してほしい。それって。何なんやろ。なんでそう思うんやろ。俺が男やからか。それとも、アキちゃんを我がものにしたい化けモンやからか。それとも、ただ、好きやからか。 「アキちゃん、もう我慢でけへんよ……やめて」 やめて、と、ずっと
呻
(
うめ
)
いてたような気がする。長かったんか、一瞬か。アキちゃんは許してくれへんかった。たぶん、わざとなんやろ。俺を責めて、我慢でけへんようにした。
堪
(
こら
)
えきれへんかった最後の声が出て、首筋にエアコンの風を感じた。お前は熱いと、この家までが俺に言うてる。燃えすぎや、お前は。恥ずかしないんか、亨。そんなに乱れて。 そんなアキちゃんの意地悪い声を耳の奥に思い出しながら、俺は結局、最後の一滴まで、アキちゃんに吸われた。 それはめちゃくちゃ気持ちよかった。立ってる足がわなわな震えた。終わってもまだ気持ちいいくらいやった。 死にそう。気持ちよすぎて。アキちゃんに何かしてもらうのは、いつも、ものすごく気持ちいいんや。俺、愛されてるって、そういう気がして。 「アキちゃん……飲んだらあかん」 切なくはあはあしながら、俺は唇を離しても腰を抱いてくれてるアキちゃんの、まだ何か口に含んだような顔を見て、どうしようもなくおろおろしてた。 でもアキちゃんは涼しい顔してた。そのままテーブルにあったコーヒーカップをとって、アキちゃんはコーヒーを飲んだ。ごくりと喉が鳴るのを、俺は倒れそうな気持ちで見てた。 「もう冷めてたわ」 なんてことないような口調で、アキちゃんは言った。そして、ぺろりと唇を
舐
(
な
)
めた。 コーヒーのことやろ。俺は腰がくだけそうやった。 「なんでそんなことするのん」 「お前がいつも
美味
(
うま
)
そうに飲むから、実は
美味
(
うま
)
いんかと思って」 う、
美味
(
うま
)
いわけないやん。それとも
美味
(
うま
)
かったんかと、俺は思わず
訊
(
き
)
いた。なんか期待してたんかもしれへん。アキちゃんが、
美味
(
うま
)
かったと言うのを。 でも、こいつが、そんなこと言うわけあらへん。意地悪なんやで。それに、つれない。 「
不味
(
まず
)
いわ」 きっぱりと、アキちゃんは言った。そして、テーブルにあったティッシュで、口を
拭
(
ふ
)
いた。
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椎堂かおる
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